気仙沼鹿折まちづくりワークショップ・アクションリサーチ

 こんにちは!学部3年の伊東です.
 2023年10月,宮城県気仙沼市を中心に2日間調査に行って参りました.東日本大震災後,私は初めて東北へ足を運ぶことができました.大学での講義等を経て学んだこと・その地域を実際に目で見ることができ,とても貴重な体験となりました.

 10月28日の午前中は世界文化遺産に登録されている中尊寺を訪れました.3000点以上の国宝・重要文化財がある中,金色堂の迫力には圧倒されました.東北が誇る財産を短い時間ながらも堪能することができました.
 次に陸前高田市まで移動し,いわてTSUNAMIメモリアル周辺を探索しました. 私含め,学生一同は時間を忘れてしまうほど美しい海を眺めていました.ただ,少し視線をずらしてみると津波の犠牲者を追悼する献花台が設けられていました.心の準備はしていたものの,少し心が締め付けられる感覚がありました.堤防を歩くとすぐに奇跡の一本松が姿を現し,復興のシンボルとして大切に保存整備されていました.松の下では,手を合わせて復興を祈る方も見受けられました.そんなモニュメントから歩いて数分の場所に気仙沼市立中学校があります.震災当時,当中学校には屋上を超える津波が襲いました.私はデータ上の数値を調べた印象よりも,残された建物や記録から受け取るイメージはより恐怖を感じました. 綺麗な風景と震災の記憶はかけ離れた存在であり,照らし合わせることは簡単ではありませんでしたが,調査員一人一人が何かを感じて持ち帰ることができたと思います.

 初日の最後は気仙沼大島を訪れました.天気にも恵まれ,亀山展望台では気仙沼湾をはじめ海岸の大パノラマを満喫することができました.展望台までは険しい道が続いていたので,途中で休憩を挟みながら,そして学生同士で楽しくコミュニケーションをとりながら山頂を目指しました.気仙沼は2021年前期放送の連続テレビ小説「おかえりモネ」の舞台であることから,山頂では関連したBGMが流されていました.ゆったりとした曲調は感動的な眺望と調和しており,心地の良い時間を過ごすことができました.

 2日目の午前中は鹿折まちづくり協議会が実施する「東中才防災まち点検・防災ウォークラリー」に参加させていただきました.まち点検では,地域内の危険な場所を実際に見て確認し合い,地図上に危険個所をマーキングし,改善のアイデアを話し合います.最終的に地域全体で点検の結果を共有し,質疑応答を行うことによって,地域への理解を深めていました.私の担当ではありませんでしたが,ウォークラリーでは小学生と一緒に通学路の危険スポットを巡り,各チェックポイントにおいて災害に関係したクイズを出題することで,年齢に関係なく防災を知ってもらう機会となりました. このように地域全体を巻き込んで,住んでいる地域の危険性を共有し合い,またその対策を行政に任せるのではなくまずは地域で対応できる力を身に付けるという姿勢は今後のまちづくりの在り方として重要な点であると思いました.結果的に地域内でのコミュニケーションが増えるだけでなく,地域を知り,街への愛着も根付いていくとも私は感じました.

 その後,気仙沼の海岸に沿って南下しました.まず災害公営住宅である長磯浜住宅地を散策しました.今回の調査の責任者である市古教授は長磯浜の復興まちづくりに大きく携わっており,当時の状況を住宅地を周りながら解説していただきました.
 その後車で数分の場所に位置するお伊勢浜に向かいました.震災以前は環境庁の「海水浴場百選」の1つに選ばれるほど賑わっていた海でした.今回の調査では数人がサーフィンしている姿を見かけ,復興の兆しを目にすることができました.
そして調査の締めくくりとして大谷海岸を訪れました.道の駅は深海誠監督の「すずめの戸締り」の舞台ロケ地であり,聖地巡礼のような形になり,私自身とても興奮しました.大谷海岸は砂浜再生まちづくり事業として,減災機能を向上しつつ地域コミュニティの醸成に成功した事例として有名です.計画では行政に対して住民も積極的に意見交換を行い,両者が並走して事業を進めていくことができました.夏には海水浴場として多くの観光客が集まり,憩いの場として人気のスポットにもなっているようです.

 私は今回の調査で改めて被災地に出向いて,震災遺構や記録から自分なりに何かを考え,持ち帰ることの大切さを学びました.自らが進んで獲得した知識や思いはそう簡単には離れません.正常性バイアスの考えから,常に防災意識を持つことは難しいといわれています.ただその現地での思いが残っているのであれば,ふとした時にさらに深く考え,行動に移すことができると思います.結果として防災意識が向上し,災害の際に活かせるはずです.
 初めてのブログ投稿となりました.拙い文章でしたが,最後まで読んでいただきありがとうございました.

以下,参加メンバーの「感想レポ」

  • 二日間を通して多くの場所に訪れましたが,陸前高田が最も印象深かったです.旧:陸前高田市立気仙中学校とタピック45はどちらも建物上部にまで津波が到達したことから,当時の津波の威力を改めて実感することができました.しかし,旧:陸前高田市立気仙中学校は日ごろの避難訓練,タピック45は避難設備により犠牲者が出なかったため,日ごろの備えによって得られた実績も同時に実感することが出来ました.今回は事前学習会の実施により,概要を知ったうえで見学することができ,去年よりも良い震災遺構見学を行えました.皆様,事前学習会の準備ありがとうございました.防災まち点検だけでなく,防災ウォークラリーも通して,多様な世代間で交流することができたため,今回の鹿折ワークショップは,将来の鹿折地区のまちづくりを考えることに貢献することができたのではないかと思います.今回も含めた防災まち点検の成果は仕上げるので,来年以降も,特に今回初参加となったB3と研究生には,研究室での重要な活動の一つとして関わり続けてもらいたいです(T.S.)
  • 皆さんお疲れ様でした.この2日間でいろいろなところに行けて,とても勉強になりました.【中尊寺】14,15年ぶりに行きました.高校では日本史を選択していたので,復習してから行けばよかったなと思いました.旅の始まりにパワーをもらえた気がします.【陸前高田】メディアではよく見る一本松ですが,実物を見たのは初めてです.津波の威力の強さを感じました.【大島】架橋されているおかげで,好きなタイミングで好きな時間だけ訪問・滞在することができましたが,フェリーしかなかったとき,特に災害時は大変だっただろうなと思います.今回は橋を利用しましたが,船でも行ってみたいと思いました.【内湾】熊本とはまた違った復興住宅が見学できました.公民館のような,地区の住民の交流スペースが熊本よりも少ないと感じました.また,庭に漁の道具が置いてある家も多く,漁師町であることが伝わってきました.【お伊勢浜】去年は伝承館の屋上から眺めるだけでしたが,今年は海に近づくことができてよかったです.海の色の感じや,海水がベタベタする感じが東北の海だな~~と思いました.また,堤防を上がったり下りたりしたので,堤防の大きさも実感しました.駐車場にはサーフィンをしに来た人もいて,海水浴場としての一面を見ることもできました.【大谷海岸】お伊勢浜との違いは海と人との距離の近さにあると感じました.道路や道の駅,BRTが近くにあり,海と賑わいの結びつきがみられるエリアだと思いました.震災前も観光地として栄えているエリアだったようなので,その雰囲気との連続性があって良いと思いました(H.W.)
  • 昨年は西中才地区のまち点検に参加させていただいきましたが,今年度は小中学生とその保護者の方を対象とした防災ウォークラリーを担当しました.去年とは違った内容でしたが,様々な世代を巻き込んで行うことも地区のコミュニティ維持には必要なんだなと改めて感じました.被災した方の体験談を直接お聞きするのは初めてでした.70代でも防災士の講座を取るなど,とても意欲的で,こちらが逆にパワーをもらったような気がしました.時間の関係でおひとりの方の体験談のみでしたが,また機会があれば体験談を聞いてみたいなと思いました.島雄幹事ありがとう!去年行けなかったところも行けてとても勉強になったし,B3とも親睦が深められてよかったです.2日間お疲れさまでした!(N.K.)
  • ワークショップ,東中才地域だけで40人前後が集まっており,その世代も様々なことに驚いた.地域の高齢者が若い世代に受け継ごうとする熱を感じて,それを若い人や子供たちも楽しみながら享受できている点に感動した.印象的だったのは,震災経験者の方の,地球の原理を理解するというお話だった.日本で生活する限りは地震とは切ることができないので,受け入れつつも最小限の被害に抑えることが重要であり,そのための努力が行われている地域だと思った(H.N.)
  • 東北地方自体が初めてだったので,全てのことが新鮮だった.教科書やテレビでしか見たことがなかった建物や地域から震災当時の様子や津波の威力の恐ろしさを実感できる良い機会となった.お伊勢浜と大谷海岸ではそこまで距離が離れていないのにも関わらず,防潮堤の雰囲気や圧が全く異なっていて住民の方の地域への思いを感じられてた.一人ひとりの「自分にも何かできないか」という気持ちが地域全体を良くしていくことにつながるということをワークショップを通じて実感した.まずは自分たちが住む地域を知ることで,危険な箇所も含めて,地域を好きになることができるということが印象に残っている(H.S.)
  • 大島展望台の登山過程は忘れられないが,頂上に登って見た景色はもっと忘れられない.秩序ある陸路,スムーズな高架橋,精神的産業などを見ました.私はyoutubで関連する紹介ビデオを見たことがあります.異なる年の同じ機位の展示,復興の歴史の果実,私は展望台で本当に見て,とても衝撃的でした.会議に参加した市民たちは積極的で情熱的で,中国ではこのような活動は極めて少なく,私も初めて参加しましたが,定期的な意見交換は非常に必要であり,非常に意義があると思います(S.K.)
  • 陸前高田には去年も訪れたが,旧気仙沼中学校などの震災遺構は見ることが出来なかったため今回見ることができて良かった.特に旧気仙沼中学校では屋上まで津波が達していたことが分かり,津波の恐ろしさを実感できた.防災まち点検では水害対策上の課題を中心に見て回ったが,近年では豪雨災害が頻繁していることから通水路の拡幅などの対策を行うことは重要であると考えた.また,2012年に土砂災害により孤立が発生したとの話も聞くことができたが,孤立した際の支援方法も考える必要があると感じた.まち点検から帰ってきた後は,危険な箇所や改善点等を地図上にポストイットで記入し貼り付ける手伝いをしたが,自分の手際が悪くスムーズに行うことが出来なかったため来年以降の改善点にしたい(S.T.)

気仙沼鹿折まちづくりワークショップ・アクションリサーチ」への1件のフィードバック

  1. 教員T.I.

    鹿折まちづくり協議会のみなさんとのコラボProjectも3年目,今年もお声がけをくださり,かつ,学生のみなさんの深い学びにも,つながったようで,何より,でした.いとけーさん「自らが進んで獲得した知識」,これからも研究室Projectでたくさん吸収ください,貴君中心のYokohama Projectも期待してます!

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