Column

卒業コラム(松澤智佳子さん,2024/3月博士前期課程修了)

 2024年3月に修士課程を修了した松澤智佳子です.私は,東日本大震災をきっかけに災害復興やまちづくりに興味を持ち,学部では東北の他大学で建築を学びました.しかし,生まれ育った東京の防災について,都市計画の観点から研究したいと思い,院進の際に市古研を志望しました.
<ナラティブ調査を通じた学び>
 市古研では,夏と冬(春)の年に2回,被災地を訪問する機会があります.自分の行きたい被災地・地域等あれば,打診すると実現することもあります.東北・熊本・神戸,いずれも思い出深いですが,最後のナラティブ調査で,コロナや地震で行く機会が何度も絶たれていた石巻を6年ぶりに訪れることができたのはとても嬉しかったです.
 また,他の学生の調査や,先生の活動に同行させていただく機会も多くあります.研究室プロジェクトと異なる形で,現地を訪れ学ぶことのできる機会が多いことも市古研の魅力の一つです.(ひとつひとつ掘り下げていきたいところではありますが,詳しいレポートはactivity blogをご覧ください!)
<研究室プロジェクトを通じた学び>
 私は2年間で「伊豆大島での防災環境学習支援」「上柚木地区での防災ワークショップ」「港区震災復興まちづくり訓練」「大田区羽田地区事前復興まちづくり訓練」の計4つに参加させていただきました.防災教育・防災ワークショップ・事前復興訓練と,主体や目的の異なる現場をたくさん経験させていただいたことは,すごく貴重な経験だったと感じています.特に,羽田地区のプロジェクトは,自分の研究対象地域とは異なる木密地域についてアプローチし,プロジェクトを主導する機会をいただきました.リサーチからまちづくり提案まで行うという点で研究との両立が大変ではありましたが,頑張ったと思えることが1つでもあったこと,自分のやりたいことができたことは,本当によかったです.
 やりたいようにやりな!と任せてもらえる環境をいただけて感謝です!
<研究について>
 修士論文では,都内の木密地域を対象に,施策と照らし合わせながら,建物と空地の変遷の特徴を考察しました.もともと「生まれ育った街の木密としての良さと,災害時のリスクの表裏一体さを扱いたい」という思いが発端にありつつも,都市防災・災害復興研究室に所属する者としてどうアプローチするかかなり長く悩み続けていましたが,先生がわたしの思いを尊重し,根気強くご指導してくださったおかげで書き上げることができました.
 また,市古研は基本的に個人ゼミをベースに研究を進めていくスタイルなので,個人ゼミの頻度と,研究のスケジュールやタスクを適宜整理しながら進めていくことがとても重要です.市古研全体のゼミや都市ゼミでも発表の機会が設けられているので,個人ゼミをマイルストーンに研究の具体的な方向性を詰めながら作業を進めながらも,より多くの人の視点を踏まえて内容を振り返る…という形で進めていきました.
研究室・学域ともにパソコン等設備が充実しているので,自分に合う作業環境を見つけて研究を進められたことも,とても良かったです.
<就職活動との両立>
 私は入学直後から,夏インターン参加に向けて就職活動を始めました.特に,M2が始まる3〜4月は,本選考と都市ゼミの準備が被るので特に忙しい時期になりますが,個人ゼミを入れるなどして継続的に研究を進めながら,選考の準備にも力を入れることが大事だと思います.
<研究室の雰囲気>
 おそらく,ここまで学生同士の仲が良い研究室は他にないのでは…!というほど,アットホームです.入学前は,個人ゼミを主軸に研究を進めると言うことで,仲良くなれるのか不安に思っていましたが,調査やプロジェクトを通じて距離が縮まり…研究室活動とは別で学生だけで交流を持ったり,本音でぶつかり会えるほど仲良くなれるのも”市古研らしさ”であると思います.
<都市政策科学域の良さ>
 一番は,専門の異なる先生方から,さまざまな観点で研究のアドバイスをいただけることです.また,都市ゼミとは別で個別に相談に乗ってくださったり,すれ違うと雑談をしたりなど,優しい先生方ばかりです.
 授業も,研究の進め方や,質問紙調査・参与観察・解析など多様な手法を基礎から学ぶことができるので,学部で卒論ではなく卒制に取り組んだ人でも不安なく研究を進められる環境が整っています.
 学年は約15人とかなり少人数ですが,その分,研究室の垣根を超えて仲良くなることができます.私の代は,旅行やまち歩きをしたり,コンペに出したり,研究や就活で困ったときに相談しあったり,,都市政策に進学して良かったと思えるほどの仲間に出会えました(…特にゼミ同期3人は,辛い時にいつも寄り添ってくれました.プロジェクトの進め方について朝まで話し合ったり,くだらない話も喧嘩もしたけど,良い思い出!)
<さいごに>
 やりたい!という思いを受け止めてくださる先生,優しい先輩方,真面目で愉快で楽しい個性的な研究室メンバーや同期の中で過ごせたこと.そして,防災に興味を持ったきっかけでもある大好きな地元を,じっくりと見つめ直し,より深く理解することができたこと.
 都市政に進学して,市古研の中で研究が出来たこの2年間は,わたしにとって本当にかけがえのないものになりました.
 関わってくださった皆様,ありがとうございました!

2024/3/31記



卒業コラム(渡邊春花さん,2024/3月学部卒業)

 2024年3月に都市政策科学科を卒業しました,渡邉春花です.学部3年生の後期から1年半,市古研究室に所属し,卒業研究やWS,現地調査等に参加しました.
卒業コラムを書く機会をいただきましたので,この1年半を通して感じたことをお話ししようと思います.

<防災・市古研究室に興味を持った理由>
 東日本大震災の発災前ではありますが,4年間福島県に住んでいたことが一番の理由です.2011年の発災時にはすでに県外に引っ越していたため被災はしなかったのですが,当時は福島に住む友人のことをずっと考えていた記憶があります.この経験から災害や防災について興味を持つようになり,市古研究室への配属を希望しました.
 先生とも何度かこの話をさせていただくことがあり,現地調査で福島県に行きたいと希望していたところ,2024年3月のナラティブ調査で実現し,東日本大震災後初めて,約14年ぶりに福島に行くことができました.調査の時間が限られている中,旅程に組み込んでくださった先生や研究室のメンバーには感謝しかありません.

<現地調査について>
 市古研での大きな学びの機会として挙げられるのはやはり現地調査です.企画から事前学習を経て現地に赴き,自分の目と耳で被災地を知るという貴重な経験でした.先輩方の卒業コラムや研究室Blogからも,その学びの多さが伝わってくるのではないかなと思います.学びの側面もさることながら,盛りだくさんの旅程をこなす体力だったり,飛行機のセールや電車のお得な切符などに詳しくなったりという副産物を得られる部分もあるのではないかと勝手に思っています.市古研所属になった皆さんはぜひ参加してほしいです.

<研究について>
 「避難所の生活環境向上に向けた民間支援組織の専門性に関する研究」をテーマに卒業研究を行いました.市古先生はもちろん,避難所についての研究で博士課程を卒業された平木さんにもアドバイスをいただきながら,卒業論文としてまとめることができました.最終的なまとめの方向性に悩む期間もありましたが,先生にはその間もずっとサポートしていただき,感謝の気持ちでいっぱいです.
 研究を進めるにあたり,実際に避難所運営に携わった2人の民間組織の方々へインタビューを行ったことが一番印象に残っています.実際の現場の話から,おふたりの考えまでお聞きすることができ,非常に貴重な機会でした.卒業研究自体はこの2月で区切りがつきましたが,このインタビューで得たこと,自分が感じたことはずっと忘れないでいようと決めています.

<研究室について>
 市古研究室にはいつも誰かがいます.9号館の5階に上がって,廊下を曲がって,部屋の電気がついているとなんだかホッとしました.サークルのこと,研究のこと,就活のこと,WSのこと,こんなになんでも話せる場所ってないんじゃないかと今でも思います.みんなでお菓子を食べたり,模型を作ったり,論文を書いたり,一時期は第2の家かと錯覚するくらいお世話になりました.
 そんな居心地の良さもメンバーの仲の良さ,優しさで成り立っていると思います.研究室に来た日にスタンプを押せる紙を作りたいと言い出せば1年半それに付き合ってくれる仲間がいましたし,いつも隣でお菓子やお弁当を食べる仲間もいました.その存在に支えられて卒業できたといっても過言ではありません.

<最後に>
 優しく接してくださった先輩方,卒業旅行に行くくらい仲良くなった同期,真面目で面白い後輩たち,皆さんのおかげで楽しい研究室生活を送ることができました.こんな個性的なメンバーと研究室で会えなくなるのはさみしいですが,大学の外でもきっと会える気がしています.これからもよろしくお願いします.
 そしてこれから市古研究室に所属する方々へ,市古研は自分の「やりたい」を後押ししてくれる環境が整っているので,たくさん活用して,たくさん楽しんでください!もし会える機会があれば研究室で起こった面白いこと,研究のこと,色々聞かせてほしいです.
最後になりますが,こんな自由な空間を作ってくださった市古先生,本当にありがとうございます.とても濃い,充実した1年半でした.ありがとうございました.

2024/3/21記



卒業コラム(長尾日向子さん,2024/3月学部卒業)

 みなさんこんにちは!2024年3月に市古研究室を卒業した長尾日向子といいます.本コラムでは,市古研究室の活動や雰囲気について,またわたしの卒業研究についてお話します.見てくださっている方のお役に立てると幸いです!
<普段の活動>
 まずは,市古研究室の普段の活動を紹介します.9号館の5階に学生の研究室と先生の部屋があり,同階の会議室でゼミを行っています.全体でのゼミは2週間に1度程度で,その他個人ゼミや学年ごとの発表練習等が随時行われています.ゼミ内での発表は,学生メンバーや先生からの鋭い意見・質問が飛び交い,耳が痛いときもありますが,研究の視野がぐっと広がる有意義な時間です.
 また学生室はいつでも使えるので,各々研究を進めたり,お菓子を食べたり,睡眠をとったり?,自由に過ごしています.研究室内にはパソコンがあり,GISやillustrator等のソフトが使える点もポイントですね.
<フィールドワーク>
 市古研究室の魅力は,やはりフィールドワークだと思います.実際に現地に訪れ,お話を聞き,まちを歩くことでしか分からないことがあります.
 私の中で印象的だった調査は,直近ということもありますが,2024年3月に行った東北調査です.東日本大震災の復興やまちづくりに携わった方にお話を聞き,災害公営住宅や伝承館,堤防や発電所等の視察を行いました.三日間で石巻(中心部・雄勝・北上)・女川・仙台・飯舘・いわきを訪れ,タイトでしたが非常に充実していました!調査の中で,学年問わず仲良くなれるのもとても良いところだと思います.
 また,個人の研究の調査に同行したり,先生のお手伝いで遠征することもあります.ときには大島の小学生と島を散策し,ときには気仙沼の地域の人にクイズを出したりもします.ぜひいろいろなところに行ってみてください!
<自身の卒業研究>
 わたしは,「胆振東部地震における暮らし・住まい・なりわいの再生に関する研究〜北海道厚真町を対象として〜」というテーマで卒業研究を行いました.
 まず研究室に配属されると,B3文献ゼミというものが行われます.この段階ではテーマがかなりあいまいでしたが,先行研究のレビューを通して自分の興味や新規性について考えることができました.私の場合は対象地が定まっていたので,文献調査を踏まえ冬頃にプレ調査としてインタビューを行い,その次の夏に本調査として現地フィールドワーク・インタビューを行いました.その間にゼミや個人ゼミ,学科の発表もあり,かなり方向性が変化していますが,最終的には暮らし・住まい・なりわいの三要素に着目し,その復興過程をまとめた研究となりました.
 都市政策科学科では,グループで研究を進める授業がありますが,一人で論文を書いたのはこれが初めてでした.研究に行き詰まったり方向が変わったりしましたが,研究室をはじめとする様々な人々の意見に触れ,考えが広がったことは得られたことの一つです!長くなりましたが,これを見ている方の中で都市政策科学科や市古研を志望している方がいれば,色々な人に相談しながら柔軟に研究を進めていくことをお勧めしたいです.
<おわりに>
 ご覧いただきありがとうございました.市古研の活動や研究のイメージが伝わったでしょうか?
 わたしの市古研での1年半はとてもあっという間で,とても充実したものでした.市古先生,学生メンバー,フィールドワークや研究などで関わったすべての方々,本当にありがとうございました!

2024/3/21記



卒業コラム(大野祐輔さん,2024/3月博士前期課程修了)

 2024年に修士課程を修了した大野祐輔です.学部時代は建築学域に所属し,研究室では都市計画について,解析を用いて学びました.大学院ではまちづくり・都市計画について,現地に赴いてより実践的に学びたいと感じ,市古研究室に進学しました.実際に市古研究室での2年間は想像以上に超充実したものでした.ここではその一端を紹介します.
〈現地調査の醍醐味〉
・WS

 市古研では研究室単位でワークショップ(WS)に携わる機会が年に複数回あります.お手伝いをしたり,時に主体的に実施したり.相手も小学生からママ世代,高齢者までと様々です.実際に防災やまちづくりを考える場に参加することで,住民が考える防災・まちづくりは何か,また住民らの意見を集め,まとめることの難しさを体感しました.手ごたえがあり,とても楽しい経験です.
・ナラティブ調査
年に1~2回,大きな災害を経験した都市に現地調査に赴く市古研の1大イベント.2泊前後のプログラムで,現地の復興のリーダーとなった方やまちづくりのトップランナーにヒアリングをし,相互に学びを深めています.学生が行きたい都市,場所を提案すれば,高確率で実現するのもいいところ.熊本,神戸,東北×2,(+水戸,北海道),どれも最高でした(詳しくは研究室Blogへ).
・研究室でのプロジェクト
タイミングが合えば,研究室単位で住民や行政と共に防災・まちづくりを考え,時には提案する「プロジェクト」に携わることができます.僕たちも大田区羽田地区での「事前防災訓練」に参加し,「羽田らしい防災まちづくり」を住民や行政の前で提案しました.たくさんの時間・労力を割き,大変にやりがいのある,そして研究室の結束力が高まる貴重な経験でした.
〈個人の研究に関して〉
 研究は2年間で計4回の学年全体でのゼミ(都市ゼミ)と,2~3か月の研究室ゼミ,後はそれに向けて個人で市古先生とゼミを重ねる,といった形で進めます.研究室ゼミでも先生や研究室メンバーから的確な指摘が飛んできます.皆真剣です.日頃から積極的に先生と個人ゼミを重ねることがカギですね.個人的には,自分のやりたいことを自由に研究させていただき,サポートもたくさんしていただいたので,大変に感謝です.
〈都市政策科学域に関して〉
 授業や普段の院生室(院生が自由に使える部屋,もはや家)での活動を通じて,他研究室の学生と関わる機会も多くあります.僕らの代は異常なほど仲が良かったと自負してます,.研究から就活,更には自主的なまちづくりへの活動・参加など,様々な相談,体験ができます.この感じはきっと都市政ならではです.同期は大切にしましょう.
〈さいごに〉
 ここまで読んでいただければ,きっと市古研の魅力,さらには都市政策科学域の魅力,たくさん伝わったのではないでしょうか.一番のいいところは,誰かの「やりたい」を先生や他のメンバーが全力で応援してくれること.先輩から後輩までわちゃわちゃしながらワンダフルな二年間を過ごうせる環境,メンバー,先生がいる研究室です.僕自身,市古研の2年間は想像以上に充実していて,人間としても二回りぐらい成長できたと勝手に思ってます.2年間,携わっていただいた全ての方に改めて大感謝します!ありがとうございました!

2024/3/21記



卒業コラム(谷井美咲さん,2023/3月学部卒業)

 2023年3月をもって市古研究室を卒業しました,谷井美咲です.
 私は2019年4月に都市政策科学科2期生として入学し,3年後期から市古研究室に所属させて頂きました.
〈この研究室を志望した理由〉
 せっかくですのでなぜ市古研究室を志望したのか,という点からお話ししておきます.
 高校生の頃,優柔不断な性格ゆえ大学で学びたい専門分野を決めきれず,入学してから深めたい分野を見つけられるだろうということで,都市政策科学科を志望しました.(父が不動産関連の仕事をしていたので都市政策全般にはふんわりと興味がありました)
 入学して1年,都市について法・財政・統計・福祉・建築など多様な分野の先生から学んだ中で,圧倒的に印象に残ったのが市古先生が開講して下さっていた「災害社会論」の授業でした.
 具体的には,これまで日本で起きた災害や復興を大まかに学んだ後,「理想の仮設住宅を設計する」という内容でした.座学ばかりだった授業の中で,実践的に考え,オリジナルな提案ができるテーマだったことが印象的かつ楽しいと感じた理由だと思います.(ぜひ皆さんも履修してみて下さい!).また,父が神戸出身で小さい頃から阪神淡路大震災の話を親戚から聴く機会が多かったことも,災害・防災の分野に一際興味を持った理由だったと思います.
〈研究について〉
 卒業論文では,「吉祥寺駅周辺の魅力を構成する要素に関する考察 -地元商業者の視点に着目して-」というテーマで研究をしました.
 17年ほど住んでいて愛着のある街吉祥寺を,災害時の危険性と絡めて取り上げたいと思いテーマ設定を始めたものの,最終的に災害・防災を絡めない「街の魅力の分析」に留まってしまったことは,市古研に所属した身としては少し勿体なかったような気がします.
 ただどうしても吉祥寺を取り上げたいという私のわがままな想いを,市古先生は否定することなく,研究室メンバーでの吉祥寺街歩きを提案・実行,研究の方向性に関するアドバイス(じっくりバージョンと雑談的なラフバージョンがありました),インタビュー調査への同行など,前向きに沢山のご協力を頂きました.とても感謝しています.
〈現地調査について〉
 歴代の先輩方も触れられていますが,毎年数回行われる現地調査は驚くほどの充実度でした.
 元々先生が連携なさっている伊豆大島の小中学校での防災教育の補助を始めとして,東北・神戸・熊本などそれぞれの地域の災害・防災を現地に行って肌で感じ,直接地元の方々からリアルなお話を聴いて理解を深めることができました.
 単純な座学やインターネットの情報を鵜呑みにするのではなく,実際に現地に赴くことでしか得られないことが沢山あるということも,これらの調査を通して改めて学べたように思います.今思えば,コロナ禍で大学生活中身動きが取りづらかった世代としてはとても大事なことだったような気がします.
〈研究室の雰囲気について〉
 私が抱いていた研究室生活のイメージは,とにかく研究室にこもって作業をする,というようなものでしたが,そのイメージは良い意味で裏切られました.
 研究ゼミがあるほか,上記のような現地調査,定期的な研究室メンバーそれぞれの研究対象地での街歩き,大学近辺の小中学校でのワークショップなど,イベントが豊富にあります.論文執筆やソフトを使った作業はもちろん研究室や自宅で行いますが,イベントの多さゆえ研究室メンバーの仲も深まり,そのおかげもあってゼミの時にも遠慮なく意見交換ができました.
〈さいごに〉
 市古研に所属していたのが1年半だったとは思えないくらい,沢山の経験をさせて頂いて,本当にありがとうございました.私自身は大学に来る日・研究室にいた時間がそこまで多くはなかったので,そう思えるのは1回1回の内容が本当に濃かったからだと思います.それに市古研のメンバーはどの代も皆優しくて真面目で個性的で面白い人たちです.温かくて家族みたいな安心感もあります.
 皆さんのおかげで楽しく充実した研究室生活が送れました.
 長くなりましたが,改めて1年半本当にありがとうございました.

2023/3/31記



卒業コラム(北沢俊悟さん,2023/3月博士前期課程修了)

 2023年3月に修士課程を修了した北沢俊悟です.私は学部時代に他大学で土木,建設などハードに関しての防災を学んでいましたが,大学院から市古研究室に所属させていただき,人と人のつながりで取り組むソフト防災に関してフィールドワークを通してたくさん学ばせていただきました.ここでは大学院生活について振り返りながら,市古研の魅力を伝えたいと思います.
〈現地調査の醍醐味〉
 コロナ禍ということもあり,なかなか遠出がしにくい状態でしたが,思い返すと2年間で多くの被災地,復興の現場を見に行かせていただきました.岩手,宮城,福島,伊豆大島,兵庫,熊本,さらに都内ではまちあるきを行うなど,他の研究室に羨ましがられるくらいの幸せな環境でした.これらの調査やまちあるきは基本的に生徒が案を出して,お話を聞きたい人にアポを取り,事前に学習をしてから行くなど,ただの旅行ではないのがミソであり,これが記憶に残る調査になったと感じています.多くの現場に訪れ空気を肌で感じ,被災地で活躍しているパワフルな人に会い,当時のお話を聞くことは,とても貴重な経験となりました.「地のものを食べて,地の酒を飲んで,地の人と交流する」楽しんで参加してみてください!
〈ワークショップの醍醐味〉
 市古研では南大沢の小中学生やその親御さんを対象とした防災WSや,港区を中心とした震災復興WS,伊豆大島では小中学生と防災学習WS,気仙沼鹿折地区ではまちづくりWS,荒川区では中小企業向けの事業継続計画のWSなど,様々な対象者に向けたWS活動を行っています.WSに参加することでそこに住んでいる人の悩みや不安,リアルな声を聞くことができるのは貴重であり,市古研でしかできない経験だと思います.興味がありましたら ACTIVITY BLOGも覗いてみてください.これらのWSは任意の参加であって,自分の都合や予定に合わせて活動に参加できるのもいいところです.参加して損は絶対にありません!
〈研究に関して〉
 修士論文では,池袋駅を対象に駅地下空間で行う帰宅困難者対策や発災直後の一時待機に着目しテーマを設定しました.始めはターミナル駅である池袋の都市開発・更新と防災対策に興味を持っていたところから,先生と話し合いアドバイスをもらうにつれて焦点を特徴的な池袋駅地下空間に当てていき,最終的には質問紙調査を用いて災害時の空間評価分析と研究をまとめていきました.市古研でのゼミや,学域全体でのゼミ,今は行っていませんが他研究室とのゼミなど多くのフィードバックを頂けたおかげで無事終えることができました.研究室のパソコン環境,生活環境は非常に整っており,とても作業のしやすい空間で研究を進めることができたのもありがたいことでした.感謝の気持ちでいっぱいです.
〈さいごに〉
 研究室で私の代は私一人だけだったこともあり,負担を考えてサポートしてくれたM1の4人ありがとう.本当に頼りになりました.一番長い時間を過ごしたB4の3人は,同級生みたいな感覚で接してくれたおかげで毎日楽しく過ごせました,ありがとう.B3の4人はそれぞれの若さと個性で賑やかにしてくれて最後の半年間,より一層研究室活動が楽しめました,ありがとう.みんなの人柄の良さと多くの研究室活動のおかげでこんなに仲良くなれたのかなと思います.さいごのさいごに,市古先生をはじめとして卒業していった先輩方,後輩や同期のみなさんのおかげで2年間が大変充実したものとなりました.誠にありがとうございました.

2023/3/23記



卒業コラム(奥村潤さん,2022/3月博士前期課程修了)

 2022年3月に修士課程を修了した奥村潤と申します.私は修士課程の2020年度,2021年度に市古研究室に在籍しました.本コラムでは,市古研で過ごした2年間のイメージを掴んでいただければ幸いです!

<大学院入試前>
 学部生時代は私大の文系学部にて地方創生などの都市計画・まちづくりのゼミナールと活動に参画していました.さらに専門性を高めたいと感じ,院進しました.特にこの分野で欠かせない防災分野について学びたかったことと,市古先生が優しく接してくださり,研究計画にもきめ細やかなアドバイスをいただいたため,市古研に進学することを決めました.

<進学決定〜入学>
 入学前にも,大学院講義のフィールドワーク(池袋)や,防災ワークショップ(八王子),更に2日間の東北復興調査(大船渡)にも同行する機会をいただきました.現地での貴重な経験や,先生・先輩方と親睦を深めさせていただくことができました.

<二年間の概要&都市政策科学域について>
 入学後は,研究や研究室活動,授業などに取り組みました.
 研究は,以下のような流れで行います.修士1年前期は研究室ゼミにて発表や先生との個人ゼミのみ,修士1年後期以降はそれらに加え,学期ごとに都市政策科学域全体の発表があります.ここでは,それを元に学域の先生方や学生から様々なアドバイスを頂くことができます.そして修士2年の1月に最終発表および提出,2月に口頭試問と最終提出という流れです.他の大学院や研究科と比較して発表機会が多いため,きめ細かなアドバイスを頂けることが本研究科の一番の特徴という印象です.
 私は,「青少年健全育成地区委員会による地域防災活動に関する研究」というタイトルで,多摩ニュータウンにおける学校と地域などが連携した地域防災活動について,実際に2つの地区の地域防災活動に加わりながら研究を行いました.

<一年春学期〜夏休み>
 入学後まもなく,講義やゼミ,大島での防災学習といった研究室の活動を行いました!
 おおよそ週1回ゼミがありました.また,就活が始まるということで,研究室の先輩方にエントリーシートを添削していただいたりもしました. 本来ならば研究室の懇親会や調査旅行がありましたが,コロナ禍のため行えませんでした….

<一年秋学期〜春休み>
 この頃になると対面で研究室に行く機会も増えました.この頃も週1回程度のゼミと週5コマほどの講義がありました.また,秋は防災イベントのシーズンということもあり,複数の地区で活動に参画し,非常に充実していました.また,大島での防災学習や港区復興訓練(麻布地区)のお手伝いも行いました.そして,11月には初めての学域全体の研究発表があり,先生方から貴重なアドバイスを頂きました.

<春休み〜二年春学期>
 この時期は主に就職活動に取り組みました.そのような中でも学期に一度の学域の発表や週一回程度のゼミはあり,大変でしたが中だるみせず研究を続けることができたように思います.また,この学期も大島での防災学習に伺いました.さらに,秋に行う地域防災活動の企画もこの時期にはスタートしました.

<夏休み〜2年秋学期>
 研究と防災活動の大詰めでした.最後の調査とまとめを行いました.なかなか難しいものでしたが,市古先生や副査の大槻先生,杉原先生のご指導のおかげでなんとか終えることができました.研究以外にも,港区復興訓練(青山地区)や,研究室メンバーのプレ調査への参加,大島の防災学習があり,最後まで様々な経験をさせていただきました.

<まとめ>
 研究としては,「青少年健全育成地区委員会による地域防災活動に関する研究」というタイトルで,多摩ニュータウンにおける学校と地域などが連携した地域防災活動について,実際に地域防災活動に加わりながら研究を行いました.私は2つの地区の活動に携わりました.これらの地区では,研究室も加わった地域防災活動が行われてきました.学校と地域,保護者組織が連携して毎年行われる地域防災活動があり,研究室としても提案や当日のプログラム提供を行ってきました.
研究結果として,地域防災活動の意義として代表的なものは,
①学校と地域住民の連携した地域防災活動の実施
②現役世代である保護者の防災学習機会
が挙げられ,災時にもこれまでの地域防災活動によって築かれたネットワークが活用される可能性があることが考察されました.
 研究と地域防災活動への参画を通して,現地の防災活動に企画の動き出しの段階から参画させていただき,提案内容の考案から地域の方々の企画の動かし方,コミュニケーションプロセスなどを現場で感じることができ,貴重な経験となりました.
 市古研ではたくさんのフィールドがあり,年々新たなプロジェクトも進行しています.
防災やまちづくりを現場で感じ,経験するには非常に恵まれた環境が整っていました.この2年間は大変なこともたくさんありましたが,非常に充実した時間を過ごすことができたと感じています.最後に,市古先生,平木さんはじめ先輩方,同期,後輩のみなさんのお陰で2年間充実して過ごすことができました.誠にありがとうございました!

2022/4/20記



卒業コラム(眞武勇人さん,2022/3月学部卒業)

 2022年3月に市古研究室を卒業しました眞武勇人と申します.
 私は,都市政策科学科1期生として,市古研究室の学部生としては,初めて卒業論文を執筆させていただきました.ここでは,1年半の研究室生活について,主にこれから卒業論文制作に取り組む後輩・市古研究室を志望されている後輩の皆様に向けて,恐縮ながら紹介させていただきます.

<研究室について>
 私は,必修科目であるプロジェクト型総合演習,課題別総合研究において,市古先生にご指導いただいたことをきっかけに,市古研究室を志望し,所属させていただきました.
 卒論テーマは特に決まっておらず,防災やまちづくりについて,知識がほとんどないような状態で配属されました.そんな私でしたが,市古先生をはじめとした,先輩・同期・後輩に様々な場面で助けていただき,無事に卒業論文を執筆することができました.
 市古研究室には,土木,建築,福祉,法学というように,学部時代の専攻が様々な大学院の先輩方がいらっしゃいました(代によって違いますが).そんな先輩方と研究室の活動に取り組ませていただいて,様々な角度の知見・考え方に触れることができたな,貴重な経験をさせていただいたなと感じております.
 市古研究室のプロジェクトやフィールドワークの多く,研究室内での交流が多い点は,他の研究室にはない魅力だと思います.また,市古先生と活動を共にさせていただく機会も多く,先生が携わっていらっしゃるプロジェクトに参加することができる点も,魅力の1つだと思います.市古研究室での活動は,学びが多く,さらに楽しいものがほとんどなので,ぜひ積極的に参加してみてください.

<卒業論文について>
 私が,卒業研究・論文制作にあたって,考えていたこと,感じたことについて,恐縮ながら書かせていただきます.
 私は,再開発地区の防災活動について,麻布・六本木地区を対象として研究を行いました.きっかけは,研究室でのプロジェクトで,麻布地区復興まちづくりワークショップに参加させていただいたことでした.麻布地区について調査する中で,大規模再開発事業が複数展開されているこの地域では,どのような防災活動が行われているのか興味を持ち,少しずつ研究の方針を決めていきました.卒業論文の方向性を決める事が,最初の悩みかと思われますが,配属されてから,研究室で活動する中で,調査を進める中で,先生と相談しながら,決めていけば良いのかなと感じます.
 また,卒業論文を制作する中で,GISやIllustratorといったツールの使い方を覚えられたり,先輩方と関わる機会が増えたり,今まで興味がなかったことに対して,その面白さが理解できるようになったりと,取り組んで良かったなと感じる点が多々あります.特に,ツールを使うことができるという点では,個人で利用するには,ハードルが高いものを利用することができます.いろいろいじってみると,こんなこともできるのか!と感じることが多く,個人的にはとても楽しかったです.使い方が少し難しいところもありますので,先生や先輩方に相談しながら,色々試してみてください.
 市古研究室には,困ったら助けてくださる先生・先輩方がいらっしゃり,研究に必要ということであれば,様々なツールを利用することができます.研究に集中するための環境がとても整っていると思いますので,気が向いたら研究も頑張ってみてください.

<最後に>
 1年半という短い期間でありましたが,とても密度の濃い時間を過ごすことができました.
 研究室というものは,部活のように積極的な活動を求められる一方,サークルのような裁量性が高い部分も多く,とても居心地の良いコミュニティだなと,個人的に感じました.
 部活やサークルに所属していない私にとっては,大切なコミュニティでしたし,これからも大切にしたいものです.本当に貴重な経験を積むことができました.先生・先輩・同期・後輩をはじめとした,関わってくださった皆様に感謝申し上げます.
 最後までお読みいただき,誠にありがとうございました.市古研究室に配属された皆さんが,研究室での生活が充実したものになることをお祈りいたします.頑張ってください.

2022/4/20記



卒業コラム(平木繁さん,2022/3月博士後期課程修了)

 私は建築設計の仕事の一部として阪神・淡路大震災の被災者支援の経験をしました.しかし東日本大震災の甚大な被害とその長期化に対して建築家としての無力さを痛感し,首都直下地震に備え事前復興まちづくりの研究をするために市古研究室の門をたたきました.ところが直後の4月中旬に故郷熊本にて大地震が発生, 1週間後には現地入りし被害調査が始まりました.研究者としてのノウハウはなく,青年期に過ごした場所で知人を頼りに見て聞いて感じることから始めました.次第にこれは熊本地震研究へ進むようにとの「御達し」ではないかと自分なりに悟り,熊本地震調査を進めていきました.紆余曲折もあり遠回りをしながらも調査・研究を探求するほど,災害研究の裾野は広く多様でした.さらに個人への支援から学会へと繋がる研究まで,すなわちミクロからマクロの世界まで長期にわたる復興研究の必要性を感じ,博士論文としては自然と自分の専門分野である「建築空間と環境」を軸として考えていったように思います.結果として,日本の博士取得者初といわれた災害避難所についての論文がまとまりました.5年半におよぶ市古研究室での「Re学生生活」は振り返ると楽しいものでした.ここではその一部をご紹介します.

研究室と研究活動について
 市古先生の学生へ細やかな気遣いで研究室の雰囲気はいつも穏やかでした.研究には真面目に取り組み,自主性を重んじる風が研究室にはあります.セミナーや学会活動,被災地調査,年度ごとの八王子多摩地域での防災活動,都内各所で行われる事前復興まちづくりなど地域連携の機会が多く,自分の意見を求められる機会がたくさんあります.
私は仕事と両立しながら,調査活動,関連するイベントに出来るだけ参加することで,各学年で違う研究室の雰囲気にすんなり溶け込むことができました.同時にそれを可能にした市古先生の配慮には感謝しかありません.また毎年の学生は皆さんユニークで,年長者としてまた,自分の学生時代を懐かしみながら,学生と接することができました.

■事前復興まちづくりについて
 入学目的であった事前復興まちづくりは豊島区2地域・葛飾区2地域・八王子市・港区2地域に加え,町田市や池袋などの防災ワークショップにも関わることができました.初回からいきなりファシリテーションを任され冷や汗をかいたこともありますが,まちを歩き,まちのひとと話をすることで,地域への貢献を実感しやりがいのあるものでした.時には学生に発言の機会が与えられ学生らしさが生きる瞬間も目にしました.まちづくりの場でお世話になった吉川先生・連先生・中林先生・讃岐先生・村上先生・鈴木さん・OG長谷川さん・小野さん,首都研総合計画研究所,地域計画連合,象地域設計等の皆さんなどたくさんの先輩から多くの教えと気づきをもらいました.

■被災地調査と学会活動について
 奥尻・広島・仙台・韓国などへの学会活動での発表では,日本中の研究者と出会いそれぞれの地域を知る機会を持てました.また市古先生が復興に取り組んだ階上を中心とした気仙沼など東日本大震災の被災地調査,大島や熊本調査,特に福島・新潟・球磨・人吉調査は忘れられません.それは災害支援体制および法律が,被災者に及ぼした支援の功罪を考えさせられる旅となりました.災害支援体制から進んで日本の社会システムそのものの考察にまで及びました.また一方では,災害・まちづくりの研究者や被災地で頑張っている尊い人々との出会いも忘れられません.これらはきっと若い学生にも感じることの多い貴重な経験だと思います.地域ごとの美しい風景と産物,さらに美味しい食事と酒などの地域文化調査は,小さな地域貢献ととらえられ,かつ貴重な情報交換と交流の場でもありました.

■博士論文の作成について
 これから長期履修制度を使い社会人ドクターを目指される方に三点.私は,査読論文の提出にあたっては自分のスケジュール感覚の見当違いを痛感することになりました.市古先生の論文のチェックは1ヶ月前をめどに調整していただいたのですが,その時点でほぼ完璧に仕上げていなければならなかったことが後からわかりました.仕事との両立で時間確保が難しい点が第一のチェックポイントです.コツコツとコンスタントにできる方は有利かと思います.第二に論文執筆にあたり,学問の深淵にはまり,あらぬ方向に向かいがちなこと,論文の筋を忘れてしまうことが多々ありました.できるだけ進捗状況も含めて先生の指導を仰ぐ事がそれを防ぐ手段だと思いました.最後に博士論文はそれまで積み重ねた査読論文のまとめというよりはさらに踏み込んで全体構成を考え,いわば別物を組み立てる必要がありました.私は積み上げ式で最終結論を迷いながら論文執筆を進めてしまいとても長い時間を費やしてしまいました.初めに博士論文要旨を完成して論文の執筆を進めることをお勧めしたいと思います.論文執筆にあたっての先生方の叱咤激励をうけ結果として,幸運にも市古研究室初の博士取得者になりました.

■これからについて
 日本各地で特に熊本,関東,東北でたくさんの素晴らしい方々にお会いできました.名刺の数は378枚,多いか少ないか分かりませんがおそらくその倍以上の方の災害支援への取組みを知ることができたと思います.まずはお会いして話すことを通して人々の知恵と人脈を広げることができました.次に博士号を取った後,知人にはこれからどうするのかとよく聞かれますが,建築の可能性も拡げるものとして防災研究は維持しつつ,災害支援の現場で求められる科学的裏付けのある検証を行い論文としてまとめていきたいと思っています.さらに避難期における空間改善のための建築家の役割を明確化して災害支援の一助になればと考えています.さてこれからどうなるかは自分でも楽しみです.そんな可能性を開かせていただいた市古先生はじめお会いした皆様に感謝して私のコラムを閉じたいと思います.これから市古研究室に入られる学生の方々,OB.OGの方と一献できるのを楽しみにしています.これからもよろしくお願いします.

博士論文要旨(都市政策科学科yearbook2021より)

2022/1/12記



卒業コラム(野村知穂さん,2021/3月博士前期課程修了)

 学部生では他大学で建築を学び,大学院から東京都立大学に入学しました.私のコラムでは『市古研だからこそできた』ことをベースに2年間を振り返り,市古研の魅力を伝えていければと思います.市古研に興味を持つ方々の力に少しでもなれれば幸いです.
<たくさんの被災地に行き,たくさん学び,たくさん楽しんだこと>
 大学院入学のタイミングで上京した私をいろんなところに連れていってくれた2年間でした.入学後すぐ,M1の4月に早速熊本地震の住まい調査に行かせていただきました.先生が調査の直前に骨折し一緒に行けなかったハプニングもありつつ,南阿蘇の被災地を歩き,南阿蘇の魅力,地震の甚大さ,人々の営みを感じることができた調査となりました.
 毎年夏には伊豆大島で2013年の台風被害について学ぶ小中学生の授業に参加させていただきました.台風26号の被害の甚大さ,災害の経験を後世に伝えていく大切さ,災害がある土地で育ってきた小学生,伊豆大島の魅力等たくさんのことを学び,体験することができました.また,伊豆大島の授業補助は当日の授業が早くに始まるので,『しょうがなく』前日に前乗りできるのでとってもおすすめです.『しょうがなく』動物園に行ったり,『しょうがなく』べっこう寿司を食べたり,『しょうがなく』ドライブしたりできます.是非参加してみてください.
 研究の対象地とした三陸町越喜来は,先生の授業で講師として来ていただいた,都市計画課協会の神谷さんにお話を聞いたことがきっかけで知ることができました.お会いした日から1週間後に開催されるそば祭りに参加したいと申し出たら,快く送り出してくれたことに感謝しています.
 M2の秋には,私の『山古志村に行ってみたい!』という発言を実現してくださり,新潟中越地震の被災地調査にも行くことができました.
 以上のように,『〇〇がしたい!』ということは否定せず,伸ばしてくれる研究室なので,自分のやりたいことをどんどん発言していくと,とても充実した研究室ライフになると思います.
<M1の夏休みに台湾に短期留学に行けたこと
 市古先生と繋がりのある台湾の大学の先生を紹介していただき,大学の補助プログラムを活用して短期留学に行くことができました.1つ上の先輩もそのプログラムを活用し,アメリカの大学に短期留学されていました.
 これは,市古先生が積極的に海外の先生を紹介してくれたからこそ短期留学が実現したと思います.留学に興味はあったけど一歩を踏み出せなかった学部時代を過ごした私ですが,先生の紹介で一歩を踏み出すことができました.チャレンジしたいことに関しては,伸ばしてくれる先生なので留学に限らず相談してみるといいと思います.
<宮野がいた>
 研究室の唯一の同期である宮野と同じ研究室になれたことは,2年間の研究室ライフを豊かで楽しくて充実したものにしてくれた一番の要因だと思います.
<ポンコツな私も受け入れてくれる後輩>
 私がどんなにポンコツでも仲良くしてくれて,時には修論を手伝い,助けてくれる頼もしい後輩がいました.そんな優しい後輩が入学する皆さんの先輩になると思ったら,ワクワクが止まりませんね
<仏のような市古先生>
 どんなへなちょこなことを市古先生は決して怒りません.市古先生は仏なのです.  上記からどんな人でもどんなことでと受け入れて,伸ばしてもらえる土壌がある研究室であることが少しでも伝わったのであれば幸いです.是非,市古研で素敵な研究室ライフを過ごしてください!

2021/6/12記



卒業コラム(宮野真希さん,2021/3月博士前期課程修了)

 2021年3月に市古研究室を卒業しました宮野真希と申します.
 学部生の時は他大学で行政学を専攻しており学士は法学を取得したため,大学院から,市古研究室に所属させていただきました.おそらく市古研究室では珍しい文系出身の院生であったと思います.そのため,私のコラムでは1から防災やまちづくりを学んだ大学院生はどのような2年間を過ごしていたのかをお伝えし,少しでも市古研究室に入りたいなあと思っていただけるような紹介ができればと思います.
<研究室について>
 私は他大学から,そしてほとんどパソコンを使わないような学部から大学院へ入学したため,論文の構成や書き方の基礎もままならず,WordやExcelの使い方でさえ不安があるような状況でした.しかし,そんな中でも市古先生をはじめ,先輩方や同期に1から教えてもらえたことで,様々なスキルを身につけることができました.周囲の方の助けもあり,卒業論文よりも飛躍した修士論文を執筆できたように感じています.また,研究室は非常に真面目で自らが学びたいと思ったことに進んで飛び込んでいく積極性のある方が多く在籍していました.そのため,プロジェクトを進める際にはそれぞれの持つ知識を結集して,非常にユニークな提案をすることができました.
 さらに,研究室のメンバーでフィールドワークを行うことも多く,東京都内をはじめ,熊本県や伊豆大島,新潟県,東北等,様々な被災地を訪れ,知見を広げると共に,メンバーとの仲を深めることができたのも大変思い出深く感じています.
<研究に関して>
 修士論文では,土砂災害警戒区域を地域内に持つ東京都内の自治会を対象に,自治会の防災活動及び世帯ごとの防災意識について研究を行いました.
 このテーマを選んだ理由としては,2つのきっかけがありました.1つ目は学部生の時に福島県で原発被災地の復興支援を行っていた経験から,住民による防災活動や意識に興味を持っていたことです.2つ目は2019年に発生した令和元年東日本台風を経験し,地元の東京が大きな被害を受けたことです.これからさらに災害が頻発化すると考えられている中で,地域としての防災活動や防災意識の在り方に疑問を持つようになりました.こうした問題意識や興味を研究として昇華させるために,市古先生は何度も話し合いの機会を作ってくださり,大変熱心に指導していただいたことでテーマを確立し,安心して研究を進めていくことができました.
 また,私が対象にした地域は,研究室として共同で復興訓練を行っていた場所であり,私自身も参加者として訓練に参加し,交流がありました.そのため,住民の方と接する機会が大変多く,信頼関係を築くことができ,普段は中々知ることのできないような現場の生の声を聞きながら論文をまとめていくことができました.このように,積極的に現場と繋がり,経験を得ながら,また,住民の方と強く結びつきながら研究を進めていくことができたのは市古研究室に所属していたからこそ経験できたことだと感じています.
<研究室での活動について>
 残念ながら大学院生2年生の時はコロナの関係もあり,少々控えめな活動にはなってしまいました.しかし,2年間を総合的に振り返ると,東京都内のPTAや自治会と協同して行った防災訓練,復興訓練,プロジェクトへの参加から,伊豆大島におけるフィールドワークのTA,そして,東北地方や熊本県,新潟県といった被災地への訪問や調査等,大変幅広い活動に多様な立場で参加することができました.直接被災地の方のお話や行政の取り組みを学ぶと共に,これからの災害に備えた防災の取り組みについても学び,様々な知識を得ることができました.
 また,東池袋での復興訓練に参加した際には,まちあるきや住民の方との話し合いの中で見えてきた防災上の課題を解決するような提案をまとめ,発表する機会をいただくこともできました.知識を受け取るだけでなく,自由な意見を住民の方に発表し,意見交換ができたのも学生ならではの経験だったと感じています.
<さいごに>
 大学院生としての2年間は大変あっという間に過ぎてしまいました.数字にすると短い気もしますが,その中で修士論文や研究室の活動だけでなく,もちろん授業や就活等,多くのことを同時並行でこなしていく必要があります.しかし,頼もしく,優しい市古先生をはじめ,色々なバックグラウンドを持った研究室や都市政策科学域のメンバーと助け合いながら日々を過ごした経験は大変充実しており,かけがえのない時間でした.そして,卒業して就職してからも影響を与え続けてくれるとっても貴重な友人と出会えることができました.
 また,2年間のうちに経験し,学んだ知識や取り組む姿勢は就職し現在に大変糧になっており,社会人になる前に,こうして興味を持ったことに対し,集中して学びを得る経験ができたのは大変ありがたかったと感じています.都立大学で,都市環境科学研究科都市政策科学域で,そして何より市古研究室だからこそ,充実した生活を送ることができました.ここに記せたのはほんの一部となりますが,少しでも市古研究室に興味を持っていただき,大変貴重で充実した2年間が過ごせるように頑張っていただければと思います.
 研究室,そして都市政策科学域には素敵な先生と先輩,そして同期が待っているのでぜひ一度,立ち寄ってみてくださいね.最後に,こうして振り返ることができる機会を頂き,ありがとうございました.


2021/5/31記


卒業コラム(小倉華子さん,2019/3月博士前期課程修了)

 2019年3月に市古研究室を卒業しました,小倉華子です。
 私は,学部は他大学に所属し,大学院から市古研究室に在籍し,研究のみならず多くのことを学ばせていただきました。そこで,今回は,研究室での2年間を振り返り,報告させていただきます。
<研究室について>
 私は,市古研究室に配属された際に一緒に配属された学生はいなく,研究室に同期はいませんでした。最初はとても不安でどう過ごしていいのか分かりませんでした。しかし,先生や先輩を含め,他大学からの学生でも馴染みやすい環境や雰囲気があり徐々に慣れることができました。また,研究室でのプロジェクト活動も多く,熊本県や東北地方など様々な場所へ訪れることができ,被災地を訪問し現地の方々の話を聞くことで,研究活動への良い刺激にもなりました。また,現地の美味しいものを飲んで食べることも楽しみの一つとなり,有意義な機会でした。  研究室での多くの活動の中でも特に印象に残っているのは,池袋駅帰宅困難者対策について考えるブランディングワークショップです。これは,池袋駅に関わる鉄道会社や商業施設などの多くの民間企業が参加し,首都直下地震への対策を考えるもので,普段見ることのできない施設の見学や普段はお話しすることのできない立場の方々と議論できる貴重な経験となりました。学生目線の意見を自由に発言できることも学生の特権の一つだなと改めて感じた機会ともなりました。
<研究に関して>
 研究活動では,私は保育園や幼稚園を対象に災害時対応の備えに着目しテーマを設定しました。市古研究室では,自分で研究テーマを考えるところから始まります。そのため,難しい場面に直面することも多々ありましたが,自分の興味のあるテーマや挑戦したい手法に取り組むことができ,自ら研究活動を進めていく一つのモチベーションにもなりました。私がテーマを考える上で,軸とした考えは,災害の多い日本において,災害に強い社会をつくるためには,災害時に共に助け合える仕組みを充実させこと。そのためには避難行動要支援者も助けることができる環境づくりが必要と考えました。テーマを選定する中で,最終的に保育園や幼稚園の子どもたちと,その周りの環境や人を取り上げることにしました。
 詳しい研究内容は今回は言及いたしませんが,2年間の研究活動で,何度も壁にぶつかりました。しかし,市古先生をはじめとする多くの方々の助言等により修士論文を完成させることができ,本当に自分を成長させることができました。
<さいごに>
 修士論文をはじめ,一から物事を考え,それを形にするという一連の取り組みを通して,成長できたことは現在の社会人生活にもとても役立っています。首都大学東京の大学院に進学し,市古研究室に所属できたことが本当によかったと思います。大変お世話になりました。 これから進学を考えている方や後輩のみなさま,市古研究室では自分の興味や考えを存分に活かすことできる環境が整っていると思います。多くのことに積極的に取り組み,成長できるように頑張ってください。
<研究室での活動について>
 市古研究室では、市古先生が行なっているプロジェクトや他の研究室メンバーの研究などで、様々な現場へ参加、経験をすることができました。他大学と共同で行なっている野田村CWSでは、岩手県にある野田村で漁師や農家といった民泊体験や住民との交流を通し、現在課題として取り上げられている人口減少、高齢化による地方衰退などについて、議論を行いました。首都大のボランティアセンターでの活動では、首都大の中で、唯一の研究室の参加として、多くの方々に研究活動や災害地の状況を伝え、他の学生や関係者と交流を行ないました。他にも、市古先生が行なっているプロジェクトでは、WSを通して多くの交流や勉強を行うことができました.
 私自身、そういった場所で多くのことを経験し、少しでも成長することができたのではと感じています。後輩の皆様も、2、3年と研究室の活動は限られているので、遊びも含め、そこで多くのことを経験し、チャレンジしていってほしいと思います。色々と大変なことがあると思いますが、頑張ってください.

2019/3/25記


卒業コラム(高橋拓宙さん,2018/3月博士前期課程修了)

2018年3月に市古研究室を卒業いたしました、高橋拓宙です.
私は、学部4年生から3年間、市古研究室に所属しており、研究室の活動や自分の研究を通して、様々なことを学ばせていただきました。この場を借り、3年間の活動やそこで感じたことを書かせていただきます。
<研究に関して>
 私は、研究室に配属された学部4年の時から、今年卒業するまで、2013年に台風26号によって伊豆大島で発生した土石流災害での避難行動•災害対応に関して研究を行なっていました。きっかけは、学部3年の春休み時に大学の集中講義で、伊豆大島での現地授業に参加し、上記の災害に関して触れる機会があり、そこから対象災害として研究を行なっていきました。研究としては、当時の避難行動や災害対応に関して、住民や役場職員、消防団などといった関係者へのインタビュー調査を中心に行なっていましたが、研究を始めた頃は、何から始めたらいいのか、何をやればいいのか、などとわからないことが多くありました。しかし、市古先生や研究室の先輩方に、気持ちの面から研究のやり方など多くのことを教えていただきました。また、現地での調査では、住民の方々や関係者の皆様に、お忙しい中、親切にしていただくなど、大変お世話になりました.
 研究の種類にもよりますが、地域や防災に関係する都市科学の研究では、その地域や住民の観察が大切だと、よく聞きます。私自身、その点はとても難しいところだと、研究をやっていて感じました。また、何度か調査をしに行き、改めて気づいたことや感じたことなどもあったので、何度も現地へ行くことは大事なことだなと思いました。私は、多く現地調査を行なっていたわけではないので、あまり偉そうなことは言えませんが、市古研の後輩の皆様には、是非多く現地へ行き、地域の住民の方々と交流をしてほしいと思います.
<その他市古研での活動を通して>
 市古研究室では、市古先生が行なっているプロジェクトや他の研究室メンバーの研究などで、様々な現場へ参加、経験をすることができました。他大学と共同で行なっている野田村CWSでは、岩手県にある野田村で漁師や農家といった民泊体験や住民との交流を通し、現在課題として取り上げられている人口減少、高齢化による地方衰退などについて、議論を行いました。首都大のボランティアセンターでの活動では、首都大の中で、唯一の研究室の参加として、多くの方々に研究活動や災害地の状況を伝え、他の学生や関係者と交流を行ないました。他にも、市古先生が行なっているプロジェクトでは、WSを通して多くの交流や勉強を行うことができました.
 私自身、そういった場所で多くのことを経験し、少しでも成長することができたのではと感じています。後輩の皆様も、2、3年と研究室の活動は限られているので、遊びも含め、そこで多くのことを経験し、チャレンジしていってほしいと思います。色々と大変なことがあると思いますが、頑張ってください.

2018/3/25記


卒業コラム(童 亜斐さん,2016/3月博士前期課程修了)

 市古研究室M2の童です。2年間研究室の皆様には大変お世話になりました。
 では、この場をお借りして日本での生活、また研究室での感想を少し書かせていただきます。
修士研究について
 私は修論では、宮城県石巻市と女川町を対象に、被災地における女性たちの主体的な生活と仕事の再建活動を着目し、支援活動が立ち上げた経緯を把握する上で、社会的な要因を合わせて取り組みの変化を考察していくことを目的とするものである。
 研究対象地域である石巻の概要、活動を行っているNPOの状況を分析し、東日本大震災後の被災地における女性を取り巻き状況を整理した。それをした上で、石巻地の人口変化と男女共同参画の状況、また、震災の影響でジェンダーに基づく固定的な性別役割分担意識の変化などを分析した。それにより、女性に対して長期的な視点に立った支援の必要性が明らかにした。特に女性視点の反映、経済活動の再生、子育て女性たちが地域孤立しないような取り組みが必要だと考えられる。
 そして、被災地に立ち上げた活動を考察し、調査により得られた結果を分析した。支援を行っている団体の取り組み変化、また利用者の状況について考察した。支援拠点として、場所づくり、地域における関連情報の提供などをしながら、平常時の災害準備に向け、潜在的な役割をもっていることを明らかにした。
 指導教員の市古太郎先生には、大変お忙しいスケジュールの中で、相談に乗ってくださり、適切なご指導を賜り、調査に大変参考になりました。現地調査の際も同行してくださり、大変お世話になりました。二年間、深く感謝致します。本当にありがとうございました。
日本での留学生活について
 大学時代は日本文化に関する専攻を勉強してきた。2011年3.11東日本大震災を発生し、偶然に《The Tsunami and the Cherry Blossom》(津波そして桜 )という記録映画を見って、津波の情け容赦ない襲来、その後に何事もなかったように美しく咲く桜……被災地における人々の大変さに涙を出てきました。日本から遠い中国にいて、感じた無常と無情などいくらはかっても仕方がないなぁってずっと考えてきました。
 2013年、卒業してから日本に留学に来てました。その時、何もわからない私を市古研での勉強をさせて、本当にありがとうございました。現地調査の際、親切な石巻市の人々に大変お世話になりました。「やっぺす」さん、「ゆめハウス」さん、「ベビースマイル石巻」の代表である荒木さん、この場を借りて御礼申し上げます。
 今まで、私は自分の力で被災地における人々に何かを変わったと言える自信がないですけど、その時の私自身には「よく頑張りましたね」と言えます。
後輩たちへのメッセージ
 市古研の皆さんにも感謝の気持ちいっぱいです。同輩たち、後輩たちにも研究や平日の生活の中で、仲良く付き合ってくれて、本当に貴重な経験が出来ました。この経験を次ぎに繋げるべく、今後も一生懸命精進していくことをお約束します。2年間本当にありがとうございました。
 夢を忘れないで、自分の力で世界を変わりましょう。
 では、会える日をお待ちしております。

2016/3/25記


卒業コラム(高橋進吾さん,2016/3月博士前期課程修了)

 市古研究室を無事に卒業しましたM2の髙橋進吾です。
 3年間市古研究室で学べたことに感謝するとともに、これまでの市古研での活動を通して感じたことをこの場を借りて書かせて頂きます。
■市古研究室での活動を通して
 私は学部3年生の冬から市古研に配属され、そのまま大学院と計3年市古研で学ばせていただきました。私が配属されて当初は震災から2年目ということで津浪被害が大きかったところはまだ少し瓦礫が残り、多くの人が仮設住宅で生活している時期でした。そんな中市古研に入り初めて被災地に訪れるとともに、気仙沼市階上地区杉の下集落で行われている住まい再建勉強会に初めて参加したときのことは印象深く残ってます。そこには津浪被害で多くの被害を受けながらもまた同じ場所に再建したいと強い思いをもつ住民を中心とした前向きな議論がありました。私は最初「なんで危険な場所なのに戻りたいのかな?」と少し疑問に思うこともありましたが、勉強会に参加するなか住民の声や思いを聞くことで少しずつ分かるようになると同時に「よりよい住まい再建とは何か」ということを考えるようになりました。私は杉の下での住まい再建勉強会にこれまで計20回ほど参加すると同時に修士論文やその他活動で様々な地域の住まい再建にも関わることで、そこに住まう人々が自ら考え、再建の姿をイメージしながら議論していくこと自体が大事であると感じました。その結果が迅速で安全な住まい再建、コミュニティを大事にした住まい再建、未来のまちを考えた住まい再建、様々なカタチであってもそれは人々にとって「よりよい住まい再建」になるということを強く感じました。そして杉の下集落での市古先生方の支援を間近で見ることで、そうした住民の主体的な議論の場やきっかけをどう産み出していくか、どう続けていくかというのは今後の課題であるとも感じました。
 市古研での長磯浜地区住まい再建WS、野田村CWS、東京での事前防災WSなど、様々な現場に参加する機会をいただけたお陰でそうした様々な問題に向き合い、考え、感じることができたと思っています。そしてそうした経験を通して少しは成長することができたと思い、社会人になってもこの経験を活かしていきたいと思います。
■修士論文について
 私は卒論では防集事業における敷地造成設計のプロセスについてまとめ、修士論文「防災集団移転事業による住民協議型住まい再建プロセスと移転住宅地デザインワークに関する研究-東日本大震災気仙沼市階上地区におけるアクションリサーチ-」では住民による共同の住まい再建の意義や役割について言及を行った。本来ならば上物である住宅の建設は個々の話であるが、震災という特異な状況下で集団移転による住まい再建では「共同」であることが大きな意味をもつと感じ研究に邁進した。結果「共同での住まい再建」の大きな可能性をいくつか示唆することができ、それは被災地だけでなく現代の都心や郊外での住まいづくりでも「共同」は大きな可能性を含んでいるとも思えた。これについては今後も住まいに関わる仕事の中で追究していきたいと思う。
 研究に際して、市古先生はもちろん支援に参加されてた先生方には多くのご指導していただき、多くの住民の方には調査のご協力をしていただき、本当に感謝をしています。多くの人に支えられ無事に修士論文を書き上げることができ、一安心するとともに、いろんなカタチで還元していくことができればと思い、より一層がんばっていきたいと思います。
■後輩へのメッセージ
 3年間ご指導いただいた市古先生に感謝をするとともに市古研の先輩方、同期のメンバー、後輩たちにも感謝をしています。市古研はいろいろな場に関わることができる面白く、貴重な研究室なので、これからも自分の興味あるものはもちろんそれ以外にもどんどんチャレンジしていってください。最初は少し面倒に思うことやつらいこともあると思いますが、帰りの道ややりきったあとには、「来て良かった」「やってよかった」と思えるはずです。私も新しい場所でチャレンジすることを忘れず、精一杯がんばっていきたいと思います。3年間本当にありがとうございました。

2016/3/25記


卒業コラム(土屋亮さん,2016/3月博士前期課程修了)

■修士研究について
 大規模災害は,その地域が抱える内在的な課題を20年先倒しで顕在化させるといいます.この点において,2011年に起こった東日本大震災は,人口減少社会における初の大震災であり,まさに時代の転換点の到来とも言えるインパクトを私たちにもたらしました. 修士研究の対象地に選定した気仙沼,研究室のプロジェクトで訪れた石巻,野田村,いわき….2年間かけて数々の被災地を訪れる中で,感じたことがあります.それは「どんな人(社会)も,立ち止まれど,また歩き出す」ということです.やや正確さを欠いた表現ですが,もう少し厳密に言えば「どんな地域も,レジリエントな(回復力のある)コミュニティたるポテンシャルは持っている」ということです.しかし、何らかのボトルネック―それが空間特性によるものなのか,制度設計によるものなのか,または地域が持つ歴史や風土によるものなのかはそれぞれですが―により,復興まちづくりが進まない,立ち遅れているといったケースもみられます.そのボトルネックを外し,地域が持つポテンシャルを最大限引き出す「技術」を学びながら,かつ自らも発信することをターゲットに,2年間の修士研究を進めてまいりました.
 修士研究のテーマは「東日本大震災における学校-地域の共同対処行動と災害後の防災体制の再構築に関する研究—気仙沼市階上地区を対象に—」とし,気仙沼市階上地区の取り組みを事例に,文科省が提唱する「学校からのまちづくり」のいまについてまとめました.先ほど「どんな地域にもポテンシャルはある」と述べました.それはすなわち「どんな地域にも,その地域を愛し,新たなまちづくりへの思いを持ったアクターが存在する」ということです.しかし,そうした個々の思いは何らかの形で発現されねばならず,またそれを可能にするフィールドが必要です.そうした個々の「思い」を結集し,また人々がネットワークを築き上げる拠点としての「学校」組織・施設がもつ可能性に着目し,復興まちづくりにおける方法論的可能性について考えました. もちろん,修士「研究」ですから,単なる調査報告やエッセイとは区別される必要があり,研究仮説の設定,仮説と結論の整合性の検討など,試行錯誤を重ねる必要がありました.また,研究室会議や玉川研究室との合同ゼミ,都市システム科学セミナーの中でいただいたコメントやディスカッションの内容も,修士研究を完成させるうえで血となり肉となったと感じています.インタビュー調査に応じていただいた気仙沼の方々を含め,私の修士研究に関わってくれたすべての方に感謝したいと思います.
■後輩たちへのメッセージ
 今ある環境に感謝し,最大限(その環境を)生かす心づもりでいれば,充実した時間を過ごせるのではないでしょうか.これからも,できることとできないことはあると思いますが,私も皆さんに負けないように,次のフィールドでも自分らしく頑張っていこうと思います.またどこかでお会いしましょう.2年間ありがとうございました.

2016/3/25記


よこはまのかわ調査(佐藤佳愛さん,2016/3月博士前期課程修了)

 今年から市古研究室に配属されました修士一年の佐藤佳愛です。
 私は横浜の河川計画から見る流域住民のコミュニティーについて研究しています。昭和30年代以降全国的に流域の都市化が進み、河川の流出量が増大する都市型水害が頻発するようになりました。この対策として、流域と一体となった総合治水対策が求められていて、近年河川の自然環境が見直され、生態系や自然風景に配慮したエコロジカルデザインが大きな潮流となりつつあります。その先駆的事例がいたち川であり、そしていたち川から始まった横浜の川づくりは和泉川で集大成となりました。そこで私は多自然型川づくりで先駆的な事例を行ったいたち川を研究対象にしました。今回は研究対象地域の第一回目の視察を行ったので、こちらで簡単に報告させていただきます。
 いたち川は都会を流れる他の河川とは見た目から異なっていました。コンクリートで全面を囲まれつつも川のすぐ傍には土のうが積まれていたり、草木が生い茂っていたりと自然と調和した河川でした。また、川のすぐ傍を歩けるような整備がなされていました。他にも区役所ではその地区の小学生が書いたいたち川が展示されていたり、図書館ではいたち川専門のコーナーがあったりするなど、住民の方のいたち川に対する愛着も伺えました。このようにいたち川では単なる護岸整備ではなく、住民と川が一つの地域となるような開発が行われていました。ただ、いたち川は地域のシンボルに留まっており、地域経済からは距離があるように感じられました。
 川を散策した際に月に一回活動されている河川保護団体の方達がいることを知り、現在はこの活動にご一緒させていただいています。今後はこの方達を始め流域住民の方達がいたち川のことをどう思っているのかを修士論文で研究していきたいと考えております。

2015/11/25記


東松島市宮戸地区,集落と住まいの再建調査(岩本真利奈さん,2017/3月博士前期課程修了)

 こんにちは。市古研究室学部4年の岩本真利奈です。私は、東日本大震災の被災沿岸部の集落や住まいの再建について研究を進めています。今回は、研究の対象地である宮城県東松島市宮戸地区について紹介させていただきます。
 宮戸地区は、大浜、月浜、室浜、里浜の4つの集落が存在する島です。漁業が盛んで海苔や牡蠣、ウニなどが名産となっています。また、宮戸島は、日本三景である松島の観光地区の一つ『奥松島』の主要部であり、島内の大高森からの眺めは松島四大観の一つとされています。加えて島の東南部には、日本三大渓の一つである「嵯峨渓」があります。また、縄文人の暮らしの様子が残る里浜貝塚もあり、とても観光資源が豊富です。観光客も多く訪れていたことから、民宿を生業としている人もいます。 私は7月21日、22日に宮戸地区を訪問し、宮戸コミュニティ推進協議会の会長さんと東松島市復興都市計画課の課長さん、奥松島縄文歴史資料館の館長さんに宮戸地区での震災直後から復興の過程についてお話を伺いました。
 2011年の東日本大震災では津波により多くの建物が流されてしまいましたが、住民の方同士の結びつきの強さや津波に対する警戒意識の高さから、人的被害はほとんどありませんでした。里浜地区ではあらかじめ9つの組が編成されていて、組内で一人一人の状態(病気、歩けないなど)を把握しており、避難の際にその方たちの安否確認ができる体制ができていたそうです。また、地震が来たら津波が来ることを意識して避難することを心がけていらっしゃいました。震災で宮戸島と本土を結ぶ橋が壊れて孤立してしまったため、支援が届くのに時間を要しましたが、翌日に島の災害対策本部を自分たちで立ち上げて支援物資の要請をしたり、住民同士で食料を分け合ったりするなど住民全体で協力して、1つの避難所で避難生活を送られたそうです。震災をきっかけに島を出る方もいらっしゃいましたが、島に残る方たちは、集落ごとに仮設住宅生活を始めることになりました。災害対策本部で家族の形態に合わせてどれくらいの間取りがどれくらい必要かをまとめて市に申請し、浜ごとに自分たちで誰がどの部屋をとるか決めたそうです。防災集団移転の移転先も、集落ごとにどこに移るかを自分たちで話し合って決め、それぞれの移転先で景観にも配慮しつつ話を進めていったそうです。今はもう移転先での生活が始まっているという段階です。また、生業である漁業の再建も漁師の方々同士の協業化などを行い、ほぼ完了している状況のようです。
 今回の訪問調査で様々なお話を聞いて、宮戸島の方々の協力体制や行動力のすごさに驚かされました。
 また、市との信頼関係もしっかりしていて従前からそういったつながりがあったからこそ、迅速な集落や住まい再建につながっているのだということが分かり、改めて宮戸島の魅力を感じました。これからも調査を続けていく中で、集落・住まい再建について考察を深めていきたいです。

2015/10/10記


伊豆大島台風26号水害の避難と生活再建に関するフィールドワーク(高橋拓宙さん,2017/3月博士前期課程修了)

 今年から市古研に配属されました学部4年の髙橋拓宙です。
 私は現在、“避難”に関する研究を進めており、一昨年に起こりました伊豆大島土石流災害について現地調査を行っています。そこでは土石流災害が起こってから(又は起こる前から)住民の方々がどのように避難行動をとったか、またそれがどのような理由で行われたものなのか、災害が起こる前の日常生活から、そして過去経験などといった点から住民へインタビュー調査を行い、研究を進めています。こちらではその調査の経過報告と伊豆大島について簡単ではありますが報告させていただきます。
 私は今まで伊豆大島への調査は今まで3回程行っています。現在、土石流被害のあった地区では、メモリアル公園などの地区別の土地利用方針や、流路の拡幅、堆積工・導流堤などの整備といった復興計画の話は進んでいるが、未だ土石流によって被害を受けた地区の多くが(神達、丸塚など)更地となっています。また、上記にあるように流路の拡幅による周辺地域住民の立ち退き問題などがあり、これからも課題・問題が出てくると考えられます。
 その中で、私は7月中頃に住民へのインタビュー調査を行い、7組の方にお世話になりました。住民の方々への単独での調査は今回が初めてであったため最初から上手くお話を進めていくことができませんでしたが、住民の方々には私の質問に1つ1つ丁寧にお答えくださり、そして同行していただいた大島社会福祉協議会の草野様には訪問する際のアドバイスなど教えていただき大変お世話になりました。この調査を通し、多くのことを学び、そして気づかされ、とても有意義な時間を過ごすことができました。今後、自身の卒業研究に向けこの地で多くをインプットし、最後にそれをアウトプットできるよう研究を進めて参りたいと考えております.

2015/10/01記


野田村復興まちづくりシャレットワークショップ(高橋進吾さん,2015/3月博士前期課程修了)

 現在大学院修士1年の高橋です。
 今回は2014年2月10日、11日に行われた野田村CWS報告会に参加してまいりましたのでそのご紹介をしたいと思います。
 その前にまず野田村CWSとは・・・
 4年前の東日本大震災による津波により東北沿岸部は甚大な被害を受け、岩手県野田村も津波による甚大な被害を受けた地域の一つです。私の所属している市古研究室では震災後、毎年夏に他の研究室や他の大学や高専と合同で「野田村復興まちづくりCWS」を実施し、冬には野田村の住民さん方に向けた提案の報告会を行ってきました。CWS(シャレットワークショップ)では野田村が抱えている問題やこれからの復興まちづくりについて、外部の人間である我々学生が何らかの貢献はできないかということで毎年CWSを通して様々な提案を行っております。
 去年の野田村CWSでは・・・
 漁業と農業のなりわい体験に加え、住民さんの家への民泊体験も行いました。私は漁業班ということで、ホタテ漁師さんの家に民泊させていただき、また実際の沖にでての漁や漁港での作業など貴重な体験をさせていただきました。より野田村について深く知り、そして野田村の方々と触れ合うことで「野田村らしい提案」の検討を目指しました。その過程でCWS期間中のヒアリングやなりわい体験を通して新しい「番屋」の設計を行い、漁師さん方にプレゼンを行うこともできました。
 2月の冬の報告会では・・・
 野田村役場の方だけでなく、多くの住民の皆さんも参加していただいて、漁業班・農業班・中心市街地班の3つのチームによる提案のプレゼンを行いました。私の漁業班では、主に「番屋の6次産業化」と「民泊プログラムをより充実させる提案」についてのプレゼンを行いました。各班とも夏のCWSを通して感じたことや、聞いたこと、考えたことをもとに東京で提案の検討を行い、それを形にして野田村の皆さんにお返しすることができたと感じました。住民の皆さんからも様々な感想や意見をいただくことができ、より一層この報告会を通して交流ができたとも感じました。
 私は今回で野田村CWSの参加は2回目ですが、CWSを通して結果としてなにを提案したか、どんなものをつくったかということが一番の目的ではなく、その過程で外部の人間である私たちが野田村の人々と交流し、野田村の今後を考えていく、それ自体が大事なのだと感じました。震災から4年が経ち、復興住宅や自立再建の住宅などが多くの地域で見られるようになってきて、被災地における復興が個々の復興から村や地域といった全体の復興に変わりつつある今、学生である自分はなにができるのか?なにをすべきなのか?そういったことを常に考えながら、今後も野田村CWSはもちろん他の復興支援活動や研究に取り組んでいきたいです。
P.S
  11月に行われた首都大学東京学祭にて「おれの野田村」を出店し、見事大盛況ですべて完売することができました。野田村の方も来ていただいてとても楽しく、野田村のおいしい食べ物を皆さんに知っていただきことができたと感じました。来年も出店したいと思いますので興味のある方は是非!!

2015/3/20記


台湾銘伝大学都市計画・防災管理学科との国際交流セミナー(童亜斐さん,2015/3月博士前期課程修了)

 市古研究室M1の童です。
 報告が遅くなりましたが、2014年10月29日、30日の二日間に私が参加させていただいて、台湾銘伝大学都市計画・防災管理学科との交流セミナーを報告したいと思います。
 昨年度8月20日〜8月21日にも台湾銘伝大学と都市システム科学域の国際交流セミナーが首都大南大沢キャンパスに開催されました。
 今年度、1日目は首都大南大沢キャンパスの国際交流会館で学生中心としてグループ(台湾)および個人報告(首都大)セミナーを行いました。台湾銘伝大学は「台北におけるまちづくり」や「市民防災ワークショップ」の取り組みを報告しました。市古研M1の土屋さんも東日本大震災津波被災地における小学校の統廃合が地域防災力に与える影響に関して発表しました。お互いに先生および学生も積極的に質問出しました。交流セミナー後、2コースで南大沢周辺小学校と多摩センターに見学に行きました。
 2日目は谷中のスタディーツアーです。谷中地域の特徴やまちづくり現状に関心しました。台湾銘伝大学の学生も事前防災(避難施設、道路確保など)に対して気づきました問題をめぐって発表しました。
 今回の交流セミナーを通して、国際交流は都市まちづくりと防災・復興における重大な役割を持っていると思います。今後台湾への訪問に期待しています.

2014/12/20記


雄勝町の集落再建調査(宮武沙良さん,2016/3月博士前期課程修了)

 今回は、私が卒業論文で携わっている石巻市雄勝町水浜集落を紹介したいと思います。
 この地区では昔遠洋漁業が盛んに行われていましたが漁業区域の規制により、現在は養殖のホタテ、わかめ、ホヤが名産となっています。海もきれいで緑も多く自然豊かな地域です。
 そんな中、2011年3月11日東日本大震災により死者1名行方不明者8名、家屋の9割が全壊または流出という甚大な被害を受けました。しかし明治・昭和三陸、チリ津波など津波常襲地域の住民の津波に対する意識は高く、地震直後に高台へ避難された方が多くいらっしゃいました。その日から仮設住宅ができるまでの間、住民は旧水浜保育所で避難生活を過ごしました。震災の影響で通行止めや通信途絶となったためまさに陸の孤島のような状況でしたが全員で協力し合い、山から引く給水設備を備え、衛生管理を徹底し、食事も一日2回摂りながら避難所生活を乗り越えていらっしゃいました。仮設の建設が終わり水浜仮設に入居したのが6/2、「互いに思いやり助け合う」「明るく楽しい」「また来たくなる」コミュニティ作りを目指して生活を始めました。現在は仮設の跡地が集団移転先となったので、水浜仮設は取り壊され住民は他地域の仮設へと移転されています。集団移転事業については現在造成工事が始まり来年の夏に入居予定です。
 水浜集落は専門家による支援はありませんが、高齢化が進んでいる中住民が主体となって助け合いながら復興に向けて頑張っています。水浜の皆さんはとても優しく力強いです。インタビューではその力強さを直接感じることができ刺激を頂いています。今後も水浜集落の復興について住民の取り組みや生活再建に注目して見ていきたいです。

2014/8/29記


江間凉輔さん(2013/3月学部卒業)

 市古研究室B4の江間です。1年間研究室の皆様には大変お世話になりました。
 研究室での1年間の感想をこの場をお借りして少し書かせていただきます。
■特別研究(卒業論文)に関して
 私は東松島市のグリーンタウンやもと応急仮設住宅の住民の方々のご協力をいただき、仮設住宅地における近隣コミュニティの形成とその空間に関する研究を行ないました。現地に何回か訪問し、東日本大震災の被災地の現状に向き合いました。グリーンタウンやもとの皆様、本当にありがとうございました。
 この研究を通じてフィールドワークから研究成果以外の事においても様々な発見がありました。  今まで把握していた被害よりも悲惨な現状であったということ。しかしそのような状況の中で、応急仮設住宅での生活を余儀なくされた方であっても、前向きで自立的に活動し復興に向かっているということ。仮設住宅での生活はやはり恵まれたものではないということ。インタビュー調査の難しさ。東北の冬は冷える。東北弁も次第に聞き取れるようになる、など多くの発見があり貴重な経験が出来ました。
 今後は実家の浜松市に戻り就職を予定してますが、この経験を通じて学んだことを行かせる場面があれば光栄です。支えて下さった皆様は本当にありがとうございました。
■研究室のプロジェクトに関して
 私はこの一年間で、野田村復興まちづくりシャレットWS、気仙沼集落防災集団復興支援、豊島区雑司ヶ谷復興まちづくりWS、高校避難所WS、小学校安心安全のまちづくりWSなど様々など研究室のプロジェクトに参加させていただきました。どれも市古研究室でしか経験できない貴重な時間で、防災に関して深く勉強することができました。防災に関しては今後の日本においてとても重要な課題になります。これから社会に出る身として、ここでの経験を活かしていきたいと思います。
■全体を通じて
 研究室の皆様やご協力して下さった皆様、本当にありがとうございました。  被災地の「いま」に触れ、専門家または一般の方と一緒に防災に関するWSを通じて、災害に関する危機意識を高めることができました。海を渡って防災を学びに来日されたメンバーをはじめ、研究室のメンバーの熱心な取り組む姿勢も素晴らしく、時に個性豊かな会話が飛び交い、また共に現地に出向き調査が出来て充実した一年間でした。
 市古先生はご自身の研究が忙しい中、学生の相談に乗っていただき、またご指導いただき本当にありがとうございました。学生として最後の一年間、自分を成長させることが出来たと思います。

2014/3/26記


長野県北部地震栄村集落再建調査(サチルラトさん,2012/3月博士前期課程修了)

 私は市古研究室M2のサチルラトです。長野県北部地震から栄村における集落復興に関する研究を行っています。
 2011年3月12日3時59分15秒頃、長野県北部の新潟県との県境付近を震源とするM6.7長野県北部地震が発生し、栄村は大きな被害を受けました。震災で最も被害が多かった青倉集落と小滝集落を対象地域として、震災後からの集落の空間変化に注目し、様々な調査を行っています。 2012年青倉集落とs小滝集落で3回の現地調査を行い、主に建物の解体・新築状況、農地再建状況、集落の空間変化などについて調査を行い、2012年12月都市ゼミで発表しました。
 2013年4月、栄村の研究について2回目発表し、4月15日から栄村で三日間の現地を行いました。今年の4月の調査では、市古先生、宮川さん(建築家、首都大の先輩)と研究室のスウさん、蘇悦さんと同行し、青倉集落と小滝集落で空間調査を行い、栄村NPOの松尾先生と渡邉加奈子さんのお話を聴きました。スウさんと私は青倉集落の2012年12月入居できた復興住宅に住んでいる渡邉加奈子さんのお宅で二日間泊まらせて頂き、本格味の中華餃子パーティを行い、とても楽しかったです。
 今年4月の調査の時、栄村でかなりの雪が残っていたが春の訪れに伴い咲き始めた花々や山の緑と白い雪の中で調査をしながら、集落の独特な風景を感じました。また、現地調査の時、集落の方々の温かいご挨拶や元気な話を聴いて感動しました。今年も二つの集落で、空間変化、農地、集落の土地利用や集落の水環境などについて調査を行う予定をしています。 震災から集落復興に関する現地調査をしっかり行い、自分の修士論文で詳しく纏めていきたいと決心しています。これからも研究室のメンバーと一緒に頑張っていきます。

2014/3/25記


サチルラトさん(2012/3月博士前期課程)

(1)日頃の蓄積と纏めの大事さ
・毎回の調査纏めやゼミ報告の資料を修士論文のように纏めておく。(自分はしっかりしなかったため大変苦労した)
・論文に使える資料を最初から適切に整理する。
(2)早めに手を出す
・皆大体12月から書いているというイメージが強いが、前もって書くのが何よりもラク。
・時間が迫ってきたら、論文を提出するための書く作業になってしまい、論文の質が低下するようになってしまう。
・どうしても提出時間に間に合うように作業を進める。
(3)留学生の後輩に
・日本語の勉強の大事さ(特に書く作業について日頃からの鍛えが大変必要)
→論文らしく書くのに、論文を読むことと資料なども論文用語で書くようにする
・頭に入っている物を文書にする際思ったより時間かかるのでお早めに書く
(4)早めに論文纏めの日程を頭に入れとく
・自分の日程と先生の日程を配慮しながら(自分は今回の論文纏めの際先生に大変お世話になりました)
・自分の場合、本論を修正するのに書くことと同じ位時間かかったので、提出前の論文修正に余裕を持つ。

2014/3/22記