市古研究室学部3年の伊佐です.今回は2025年3月に引き続き,9月に行った能登半島地震復興調査ついて報告します.
調査1日目の9月15日は,輪島市金蔵地区を訪れました.金蔵地区では,フィールドワークとして,20241月1日に発生した能登半島地震による建物の被害・復興状況,耕作地の利用状況調査を行いました.また,NPO法人金蔵学校の石崎さんに金蔵再生のための活動や今後の復興ついてインタビュー調査を行いました.
実際に訪れて感じたのは,静かな山あいにありながらも人と自然,暮らしがしっかり息づいている集落だということです.果樹園づくり,地元産の味噌・野草茶など,地域資源を活かした新たな取組が進められており,挑戦と創造の集落であると感じました.また,お昼にジビエカレーをいただいたのですが,お肉が柔らかくてとてもおいしかったと同時に,金蔵で捕ったイノシシ肉を使用しているため害獣駆除や地産食材を活かす生活文化の深さを実感しました.
金蔵集落の調査で最も印象的だったことは,石崎さんの「平時から地域の人同士でお互いに思いやりや感謝の気持ちを大切にすること」という言葉です.金蔵では「総がかり」と呼ばれる助け合いの精神があり,震災時にも買い出しや支援物資の提供を交代で行うなど,思いやりを基盤にした支援が自然に行われていたと伺いました.ルールや義務ではなく,人と人との信頼に基づく助け合いが地域の力となっている点が印象的でした.また,「帰る場所,心の拠り所としてのふるさとを残したい」という言葉からは,変化の激しい現代においても“変わらない価値”を大切にしようとする強い意思が感じられました.石崎さんは,地域の課題や取り組みの成果を冷静に見つめながらも,諦めずに挑戦を続けており,その姿勢に深い尊敬の念を抱きました.


はじめまして,市古研究室学部3年の佐藤綾です!
調査2日目の9月16日は,2班に分かれて甲地区の資源マップを作成するため,フィールドワークを行いました.その後,能登半島地震の際に避難所として利用された旧兜小学校の見学をした後,かねてからB4の居山さんと親交があった東井栗園さんで栗拾いの体験をさせていただきました.
甲地区でのフィールドワークを通じて,私たちは「残したい」「伝えたい」と思える風景や営みに数多く出会いました.それは,黒瓦の家並みや海と山の近さ,静けさに包まれた暮らし,そして人の温かさなど様々です.参加者それぞれが見つけた「甲らしさ」は少しずつ異なりながらも,共通していたのは「甲の魅力を,未来へどうつなぐか」という問いであると感じました.
多くの参加者が注目したのは,甲の「風景」と「人の営み」が織りなす独自の価値です.海と山が視界に同居する地形や,海のそばに広がる家庭菜園と畑.自然と暮らしが地続きであることが,甲の大きな魅力として語られました.黒瓦と木材で統一された家並みは,バラバラに建つ家々の中に不思議な調和を生み出し,地域の歴史や文化を象徴する景観資源となっています.
震災後に整備された「ボラ待ち館」や旧甲駅など,復興の記憶と未来の拠点としての可能性を秘めた場所も,継承すべき大切な資源です.また,静けさや水の音,虫の声といった「音の風景」や,住民の温かさ,外からの人を受け入れる寛容さも,目に見えない資源として印象に残りました.
一方でらこれらを守り続けるには,人口減少や高齢化による担い手不足や外部との関わりのバランスなど,課題もあることが改めてわかりました.
参加者が考えた兜の魅力を伝えるキャッチコピーには,甲の魅力がぎゅっと詰まっていました.
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- 「海と山,ひとつの場所で2つの絶景」
- 「バラバラなのに,ひとつになるまち甲」
- 「賑わいすぎない心地よさ」
- 「いつかあなたも帰りたくなる場所,かぶと」
- 「海と山と人と,ぜんぶがちかくて,いいところ.」
- 「畑から,庭から,自然から,植彩のまち甲」
- 「能登の原風景まるっと,穴水・甲」
- 「重ねた時代が響き合う,甲のまち並み」
- 「自然と人が織りなす,心地よい風景」
- 「思い,思われ,思いやり」
- 「自然と人とが共存共栄するまち」
- 「海と共存した生活風景」
どの言葉にも,甲で感じた風景や人の姿,そしてそこに流れる時間への敬意が込められていました.甲地区の魅力を肌で感じたり,避難所運営後そのまま残る旧兜小学校を見学したり,栗拾いをして甲のすてきなお土産をゲットしたりと,盛りだくさんな2日目となりました!

市古研究室学部3年の横山茉衣です.
調査3日目の9月17日は,七尾市内の各地域で班ごとに現地調査を行いました.金蔵地区では住民協議会の方々へのヒアリング,自由調査班は和倉温泉周辺の被害状況の確認を行うなど,地域ごとの状況を多角的に捉える活動となりました.私はその中で,七尾市の矢田郷地区コミュニティセンターを訪問しました.
矢田郷地区コミュニティセンターでは,事務局長の関軒さんから,地震発生直後から現在までの避難所運営について伺いました.センターは発災当日から避難所として開設され,地域の人々の避難先であると同時に,物資支援の中継拠点としても機能していたそうです.事務局長をはじめ職員の方々は,「当初は避難場所と避難所の違いも知らないほど,防災の知識がなかった」と話してくださいました.それでも,事務局長ご自身を含め皆さんが被災者として混乱のさなかにありながらも,コミュニティセンターに避難してきた人々を守るために,「人々のために必要だと思ったことはすぐに行う」という気概でさまざまな対応をされていたと伺いました.その姿勢に,想定外の状況にも臨機応変に対応する行動力と地域への強い思いを感じ,深く印象に残りました.特に心に残ったのは,「STAFF」ではなく「困り事・ご相談」と書かれたビブスを着用していたというお話です.職員を “運営側”として線を引くのではなく,同じ立場で支え合う姿勢が感じられました.また,複数の部屋を活用して家族ごとに避難できるよう調整したり,子どもが安心して過ごせるスペースを確保したりと,福祉避難所に近い形で運営が行われていたことも印象的でした.避難所内には花やメッセージボード,テレビでのお笑い番組なども取り入れられ,心の疲れを和らげる工夫も多く見られ,こうした細やかな配慮の積み重ねに,現場の温かさと経験に基づく知恵を感じました.また,こうした取り組みの背景には,地震以前から続く地域内のつながりと信頼関係があったことも大きかったといいます.
こうしたお話を伺う中で,災害時の対応力は特別な仕組みだけで生まれるものではなく,普段からの顔の見える関係づくりや,地域に対する思いの積み重ねの上に成り立っていることを感じました.矢田郷での経験を通して,地域の力とは何かを改めて考えるきっかけになりました.
今回の能登半島地震復興調査を通して,地域の方々がそれぞれの立場で復興に向き合う姿や,日々の暮らしの中に息づく支え合いの力を目の当たりにしました.現地では被災の爪痕がいまだ残る一方で,その中でも前を向いて歩もうとする人々の思いが確かに息づいており,地域に根ざした復興のあり方について深く考えさせられました.現場で見た光景や伺ったお話の一つひとつから,地域の方々が互いに支え合いながら日常を取り戻そうとする強さを改めて感じました.また,調査を通して先輩方の行動力や周囲への気配りにも大きな刺激を受けました.インタビューの準備や進行だけでなく,後輩の動きにも常に目を配りながら活動を進める姿を見て,自分達も今後はより広い視野を持って行動したいと感じました.B3として研究室に加わったばかりですが,今回の能登調査を通じて多くの学びや気づきを得ることができました.今後は,先輩方の姿を手本に,主体的に考え行動しながら,研究室での学びをさらに深めていきたいと思います.

















