「祖霊のともしび」の運営支援ボランティアに参加して

 こんにちは.市古研究室学部4年の宇都木葵です.2025年8月14日から16日にかけて,CS-Tokyo能登半島地震ボランティアプログラムに参加し,輪島市町野町の金蔵集落で8月15日に催された「祖霊のともしび」の運営支援を行いました.今回はその報告記事を書かせていただきます.

 祖霊のともしびとは,能登半島地震の復興を願って,正願寺に 4,000本のろうそくを灯す行事です.金蔵集落は私の卒業研究の調査対象地でもあり,これまでに二度訪問したことがありましたが,ボランティアとして訪問するのは今回が初めてでした.調査対象地として集落への理解を深めるだけでなく,私自身が集落に対して何か貢献したいという思いで,今回のプログラムへの参加を決めました.

 1日目には「祖霊のともしび」の主催者である I さんからお話を伺いました.I さんは NPO 法人金蔵学校の理事長を務めておられ,多様な地域活動を手がけてこられました.金蔵学校は,最初は有志3名による「考えてみよう会」から始まり,過疎化の現実に向き合う試みでした.I さんはこの段階を「第1ステージ」とし,ただ考えるだけでは変化は生まれないとして,NPO 法人金蔵学校を設立し,食談義,パソコン教室,万燈会,特産品開発などの活動を進めてきた時期を「第2ステージ」と呼んでいます.そして今が「第3ステージ」であり,この「第3ステージ」こそが金蔵の「再生」を実現する段階であると I さんは語ります.I さんは,真の復興とはインフラや住宅を復旧することではなく,そこにある“営み”を取り戻すことだと強く強調されていました.現在 I さんは,廃寺の建物を利活用する計画を進めており,その構想には三つの柱が含まれています.第一に,来訪者が宿泊できるゲストハウスの設置.第二に,金蔵学校の活動拠点の設置.そこでは,能登再生戦略会議の設立や,果樹園づくりによる将来的な農業体験の事業化を目指す「金蔵楽園構想」などを具体化していくことが考えられています.そして第三に,地方での生活を誘致するシェアハウスとしての構想が含まれています.こうした取り組みを通じて,震災を経てもなお,地域の資源を生かしながら,集落の本質的な再生をめざす姿勢には深く感銘を受けました.

 2日目は催事準備を中心に動きました.午前中は,ろうそくをワンカップ瓶に入れ正願寺の境内に並べ,各地から寄せられた復興への願いを書いたメッセージ用紙を瓶の上にかぶせる作業を行いました.その後,開催時刻までの時間を使い,珠洲市方面を視察しました.目にしたのは激しい土砂崩れの跡,地上に設置された水道管,倒壊した家屋の瓦礫など,被災当時から手つかずのまま残る被害の爪痕でした.道中には「みんなのスーパー 長橋食堂」に立ち寄りました.長橋食堂は,ボランティアで能登に来ている女性が営む小さなお店で,1階には日用品が並び,奥には交流スペースとしてテーブルが設けられています.私たちはかき氷をいただき,立ち寄ったおばあさんが持ってこられたキュウリの漬物もお裾分けしていただきました.お店は海沿いの道に建っていますが,震災で隆起した影響で海岸線が離れて風景が大きく変わったと伺いました.また,株式会社珠洲製塩を訪れ,海辺での製塩作業や製塩所の様子を見ることもできました.

 夕方に金蔵に戻り,ろうそくの着火作業を行いました.その後,夕食にIさん特製のイノシシカレーをいただきました.前日から具材を煮込み,スパイスをふんだんに使用した本格的なカレーでとてもおいしかったです.夕食を食べ終え,日が暮れ始めると,続々と正願寺に人が集まり始めました.正願寺のお堂では,トランペットやフルート,歌のコンサートが開催されました.お盆の時期ということもあり,集落住民だけでなくその子や孫なども来場しており,コンサートでは子どもから大人までなじみのある曲が多数演奏され,特に「花は咲く」の演奏には深く心を動かされ思わず涙を流してしまいました.境内に準備したろうそくも日が暮れると一つ一つがキラキラと輝き,とても美しかったです.そして無事に,催事当日を終えることができました.

 3日目の早朝には,穴水の民選委員であるM さんのご自宅を訪問しました.M さんは,復興カフェを通じてボランティアとの関係を築いておられ,地域住民の状況を日頃から把握し,訪問記録や会話記録を残し,必要なときには役所やボランティアにつなぐ役割を担っておられます.2日目の夜にも宿泊拠点に顔を出され,お手製のおかきを差し入れてくださったり,3日目にお宅を訪問した際にも家庭菜園で育てたしそやじゃがいもを私たち全員に分けてくださったりしました.Mさん自身もご高齢でありながらアクティブで,とても温かく,かつしっかりと地域の安全・安心を見守られている方で,地域にとって欠かせない存在だと感じました.その後,正願寺に戻り,ろうそくを回収し,瓶を片付ける作業を行いました.瓶に入っていたろうそくを取り除き,コンテナに詰める作業をもって午前中にはすべての作業を終え,ボランティアとしての行程を終了しました.

 この3日間を通して,能登の方々の温かさにふれ,能登に対して調査対象地としてではなく,支える主体として受け入れていただけた実感を得ることができました.調査としての義務感や,相手に「協力していただいている」という気持ちとは別の立場で訪問することで,より深く感謝される感覚や,人の温もりを感じる機会となりました.この経験を経て,能登や金蔵との距離がより近くなったように感じ,以前にも増して金蔵を大切に思えるようになりました.

「祖霊のともしび」の運営支援ボランティアに参加して」への1件のフィードバック

  1. Teacher I. 投稿作成者

    宇津木さん,本当に,とても素晴らしい体験をされた様子,伝わってきます.
    出発前は初対面の参加者との共同生活3日間でのボランティア活動,不安もあったかと思いますが,その不安がふっとんだ感じ,ビシビシと伝わってきました.

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