市古研究室学部4年の居山です.
立秋を過ぎ,お盆休みも終わりましたが,まだまだ暑い日がつづきますね…. 残暑厳しい中,皆様はいかがお過ごしでしょうか.
私は資格勉強と旅行計画に追われる毎日を過ごしています.
さて今回は,今年7月20日から21日にかけて実施した,穴水町甲地区での卒業研究調査についてお伝えしたいと思います!
市古研究室では,昨年1月の能登半島地震以降,昨年9月,今年3月の計2回の復興ナラティブ調査を実施してきました.
昨年9月の調査は,私がこの研究室に配属されてから間もない時期で,慌ただしくも充実した3日間を過ごしたことを今でも鮮明に覚えています(笑)
そして,この調査での経験をきっかけに,卒業研究では「能登復興」を考えたいと強く思うようになりました.
特に印象に残ったのが,私が研究対象地として設定している,穴水町の「甲」という集落です.能登半島の東側に位置する沿岸集落で,東は富山湾,三方は山に囲まれた,日本の原風景を留める自然豊かな場所です.
調査にて複数の被災地を巡るなかで,甲は,特に「復興によって明るい兆しが見えるのではないか」と感じました.
お話を聞かせていただいた方から「甲を絶対になくさない」という思いを聞いて,この集落の復興の様子を追いたい,何か自分にできることはないか,と考えるようになりました.そして,私は「復興するコミュニティにおける居住環境の現状と課題-2024年能登半島地震,石川県鳳珠郡穴水町甲地区を対象として-」というテーマで卒業研究を進めることとしました.
「居住環境」という言葉の定義は一概には難しいのですが,被災地において特に重要な論点は,①安全性,②利便性の2点だと考えています.私の研究においては,前者については人的交流や地域コミュニティを,後者については買い物や交通について焦点を当てています.甲で暮らす方々を取り巻く「居住環境」の現状を明らかにすることで,この集落の集落の持続可能性を考える一助になればなと.さらに,甲には,「穴水町甲復興団」という復興のキーパーソンが存在します.地元出身の若手メンバー数名によって立ち上げられたこの団体は,毎月1回,集落内の公民館で「甲復興カフェ」を開催しています.誰でも気軽に参加できるこのカフェでは,地域内外の人々が集い,お茶やお菓子を囲みながらざっくばらんに話をすることができる場となっています.3月の調査ではこれを対象に参与観察調査を実施しています.
また,甲復興団の新たな取り組みとして,廃線となった旧のと鉄道能登線の甲駅を活用して賑わい拠点をつくろうという動きがあります.ですが,復興団について書こうと思うととても長くなってしまうので,気になる方は復興団の公式Instagramを是非覗いてみてください!(@anamizu_kabuto_fukkodan)
そして今回,復興団が主催する「甲駅ランチマーケット」の参与観察調査と,居住環境に関する住民インタビュー調査を行うため,単独調査を実施しました.(同行してくださった市古先生,本当にありがとうございました!)
7/20,午前の便で羽田空港から能登里山空港に向かい,正午前には甲に到着しました.北陸とはいえ東京と変わらないほど暑く,車から降りて直ぐに汗が噴き出てきました….甲駅前の広場に向かうと,既にランチマーケットが始まっていました.キッチンカーのほか,テントブースでは,餃子やビール,更には復興団のメンバーがつくった野菜やお菓子などが売られています.さらに,穴水町の中心部にあるお蕎麦屋さんの店主による「そば打ち体験」も開催され,会場は賑わいをみせていました.しかし,3月に調査した復興カフェと比べると,他の地域からの参加者はあまりみられませんでした. ただ,当時は構想段階だった「甲駅での賑わいづくり」が,このように実際に形になっているのを目の当たりにしたことで,甲の復興の歩みを確かに感じました.復興団のメンバーをはじめ,甲の方々は,私達のようないわゆる「よそ者」に対しても温かく接してくださいます.ランチマーケットでうろうろしている私達にも気さくに声をかけてくださり,なんと甲の海で採れたサザエの浜焼きを食べさせていただきました!(人生初のサザエでした)
その日の夜には,復興団メンバーのご家族のお宅にお招きいただき,家庭菜園で採れた食材を使った手料理までご馳走になりました….まるで親戚の家に帰省したような感覚で,一瞬,調査だということを忘れてしまいそうでした(笑)
さて,2日目は,居住環境に関する住民インタビューを行いました.冒頭にてお伝えしたとおり,私の研究では地域コミュニティや買い物,交通に焦点を当てていますが,今回の調査では特に「買い物」事情に関してお話を伺いました.調査に協力してくださった女性お二人は,とてもパワフルな方々で,こちらの質問にも丁寧にお答えくださいました.普段の買い物場所やそこまでの移動手段,さらには住宅の再建に関する問題や復興に向けた不安など,住民目線で見る居住環境の現状について,細かく教えていただくことができました.
お話のなかで特に心に残ったのは,かつて甲にあった5つの個人商店についてのエピソードです.インタビュー対象のお二方とも,実際にその商店を経営されていた方でした.しかし,今回の地震の影響によって廃業を余儀なくされたとのことです.前日,自宅に呼んでいただいた方に,その商店について伺ったところ,『毎週決まった曜日は仕事を早く切り上げ,そのお店に寄って,お酒を1杯呑んでから家に帰る.行くとつまみも出してくれる.』と教えて頂きました.これらの商店は,単なる買い物場所としてだけではなく,地域住民の憩いの場としても重要な役割を果たしていました.
しかし,この甲の風景は,地震によって失われました.
一度失われたものを元に戻すことは非常に困難です.それでも,甲の方々は「もう一度その風景を取り戻したい」と思っているのではないでしょうか.
そして,復興団はその思いを受け止め,復興に取り組んでいるように感じます.
こうした甲の方々に対して,私ができることは,居住環境の現状を記録し,分析・考察を通して地域の方々に還元することだと思っています.
卒業研究の最終地点であるポスターセッションまであと半年ほどですが,研究,旅行,研究,資格,研究…, それぞれを全力で取り組み,やり切りたいと思います.
いまを大切に,頑張ります.


居山さん,穴水町甲集落のフィールドワーク大変おつかれさまでした.
「この集落の復興の様子を追いたい,何か自分にできることはないか」という問題意識,研究室の全体雰囲気にも近いですよね.そして「人生初のサザエ」「まるで親戚の家に帰省したような感覚」という,ますます甲集落の魅力に惹かれていく様子,伝わってきました!